大津いじめ判決 加害の重さ厳しく問う - 信濃毎日新聞(2019年2月21日)

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「いじる」側と「いじられる」側―。ゆがんだ関係の下で繰り返された嫌がらせや暴力によって男子生徒は精神的に追い詰められ、自ら命を断った。いじめという行為の重大さに厳しい姿勢を示した判決だ。
大津市で2011年に中学2年生が飛び降り自殺した事件である。遺族が加害者側の元同級生らに損害賠償を求めた裁判で、大津地裁は、いじめが原因になったことを明確に認め、自殺は予見できたとする判断を示した。
遊びの名の下に、顔を殴ったり、ハチの死骸を食べさせようとしたりした事実を詳細に認定。固定化した上下関係と加害行為の積み重ねが孤立感や絶望感につながり、死にたいという気持ちを抱かせたと述べている。
生徒の自殺をめぐっては、市教委が当初、いじめとの関係は不明と発表したが、その後、市が設けた第三者委員会が直接的な要因になったと認めた。元同級生2人が暴行容疑で書類送検され、家裁が保護観察処分にしている。
いじめに関わる訴訟で、加害者側の予見可能性を認めた例はほとんどない。立証の難しさが壁になってきた。今回の裁判は、家裁の事件記録や第三者委の報告書などが証拠として提出され、踏み込んだ判断につながった。
いじめ防止対策推進法が議員立法で成立、施行されるきっかけになった事件である。子どもの心身に大きな被害を及ぼす「重大事態」では、学校や教委が調査組織を設けて事実を認定し、被害者側に説明することを求めた。
昨年度、全国の学校が把握したいじめは40万件を超え、重大事態は過去最多の470件余に上っている。自ら死を選ぶ子も絶えない。状況は依然深刻である。
見過ごせないのは、事実の解明や説明に消極的な学校、教委がいまだに目につくことだ。責任追及を恐れる隠蔽(いんぺい)体質も根強い。被害者の家族らが不信感を強める事例が各地で相次いでいる。
子どもの間で起きるいじめは、大人には実態が見えにくい。加害者の子どもが別の子からいじめられている場合もある。虐待や貧困といった問題が背後で複雑に絡んでいることも少なくない。
だからこそ、背景にも目を向けて事実を明らかにし、丁寧に向き合っていくことが重要になる。最悪の事態を防ぐには、学校が、地域で子どもや親と関わる福祉関係者らと協力することも欠かせない。今回の判決を、そのことを再認識する機会にしたい。