(筆洗)中国が目指すという「宇宙強国」なる言葉がちらついて - 東京新聞(2019年1月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019010502000130.html
https://megalodon.jp/2019-0105-0943-09/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019010502000130.html

鏡台の前で、寂しいあの頭髪を手入れしながら、波平さんが「おどろいたなぁ」と声をあげる。「月の うらがわ さつえいに せいこうするとは」。一九五九年発表の四こま漫画「サザエさん」である。
そのうしろ、物陰に隠れるサザエさんが、カメラを波平の後頭部に向けて、一枚狙っているというのが落ちだった。ソ連の探査機による撮影成功のニュース、磯野家のみならず六十年前のお茶の間にとっても、なかなかの驚きだったようだ。
毎晩空にあるのに、決して反対側を見せない。何があるのか。生き物は。月の裏側は、謎と神秘の地として、人々の想像力をかき立ててきた。SF小説や映画、音楽の題材として、数多く取り上げられている。
その神秘の地で、史上初の快挙だという。中国が月の裏側に送り込んだ無人探査機が軟着陸に成功した。送られてきた写真は、起伏のある地平線と表面を実にきれいにうつし出している。月面を走る探査車の活動も始まる。
太陽系の成り立ちの解明など期待も高まるが、中国が目指すという「宇宙強国」なる言葉がちらついて、素直に驚けない。国威発揚に加えて、資源の確保や軍事利用などの狙いも、込められている探査らしい。
強国ぶりに、驚いたなあでは、興ざめだ。神秘に満ちた月面に国家の思惑ばかりがにじむと、人々が温めてきた数十年来のロマンも好奇心もしぼもう。

中国、月の裏側に着陸 何をしようとしているのか - BBCニュース(2019年1月4日)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-46755398

中国政府は3日、中国の無人探査機「嫦娥4号」が3日午前、世界で初めて月の裏側への軟着陸に成功したと発表した。嫦娥4号計画は、月の裏側について何を調べるのだろうか? 目的はいくつかある。