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危機感を抱かせる前代未聞の出来事だ。
渡嘉敷村の前島で、航空自衛隊那覇基地が、村と「永久承諾」という取り決めがあるとして、2000年以降、捜索救出などの訓練を村に通知せず年に100回以上も実施していることが判明した。ただ自衛隊は「永久承諾」について記した文書の所在は「不明」とし、村側は「聞いたことがない」としている。
訓練の通知をしないのも、文書の所在が「不明」なのも、公的機関同士の手続き上、極めてずさんと言うほかない。文書が存在しないのなら、根拠のない演習が約18年間も続いていたことになる。非常に大きな問題だ。
識者が指摘しているように、訓練をしている地域が私有地なら不法侵入となり、村有地だとしても村議会の議決が必要な事案である。その上、村と自衛隊の認識は食い違っている。村は陸上での訓練は実施されていないとの認識だが、自衛隊側は「集落を除く前島全体で可能」とし、陸地でも実施している。訓練の根拠となる文書が見つからない以上、所有者の権利侵害が疑われても仕方がない。
事の重大さはそれだけにとどまらない。軍事訓練である。一歩間違えれば、住民の生命や財産に関わる。根拠が曖昧な上に通知もない訓練が繰り返されていること自体、村にとっては絶対に許されない。住民の生命や財産を守るのは自治体の重要な責務だからだ。
そもそも通知を必要としない陸上も含めた「永久承諾」などという取り決めは自治体側にとってはあり得ない。その時々の住民の意思や安全面、環境、行政判断など状況は変わり得るからだ。そんな取り決めは、住民の権利や自治権の放棄であり、事実上の占領状態と言っても過言ではない。
自衛隊側に、このような訓練がまかり通るという感覚があるのも由々しき問題だ。感覚にとどまらず実際に長年実施しているのだから、シビリアンコントロール(文民統制)が機能していないとの批判も免れない。
自衛隊が住民の生命や財産をないがしろにする形で訓練する姿は、沖縄戦当時、渡嘉敷村などで住民を「集団自決」(強制集団死)に追い込んだ日本軍の姿勢とも重なる。村内でも前島は、日本軍が駐留しなかったために「集団自決」が起こらなかったと言われる島である。自衛隊の存在は、訓練に伴う危険だけでなく、真っ先に敵の標的にされる可能性を高める面もある。これも大きな基地負担の一つだ。
施設の共同使用や合同演習など自衛隊と米軍の一体化が着実に進んでいる。その意味で近年、先島で施設建設が進み、自衛隊が拡大・強化されていることは、米軍の新基地建設とともに沖縄の基地負担増の大きな側面だ。今回の問題を機に米軍の機能強化だけでなく、南西諸島への自衛隊の配備拡大・訓練強化にも一層目を向ける必要がある。