会計検査院報告 無駄減らさずに増税か - 東京新聞(2018年11月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018111002000145.html
https://megalodon.jp/2018-1110-0930-48/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018111002000145.html

これで消費税増税に理解を求めるというのだろうか。各省庁の無駄遣いや安倍内閣の財政規律のなさは目に余る。増税を決めた際に国民に約束した「行政の徹底した無駄削減」は大うそだったのか。
会計検査院がまとめた国の二〇一七年度決算への検査報告で、税金の使い方などに問題があると指摘したのは三百七十四件、金額で千百五十六億円に上った。
来年十月の消費税の税率引き上げに備え、政府は巨額の景気対策を検討している。だが、求められるのは国民の痛税感を和らげる一時的な対策などではない。国民に負担増を強いる以上は不適切な支出を繰り返さないことだ。
会計検査院の指摘は多岐にわたり、今回もずさんな税金の使い方が明るみに出たが、特徴的なのは省庁が五輪や成長戦略に便乗し、非効率な支出までもがまかり通ってきたことだ。
二〇年東京五輪パラリンピック関連の国の支出について検査院は過去五年分で八千十一億円に上ったと指摘。政府はこのうち、大会運営などに直接関連する支出は千七百二十五億円にとどまるとする調査結果をまとめた。
つまり、暑さ対策に役立てるという「気象衛星の予測精度の向上」(三百七十一億円)や、「環境への配慮のための電気自動車の購入補助」(五百六十八億円)といった便乗支出が大半を占めていたのである。
安倍政権が成長戦略の目玉として次々と立ち上げた官民ファンドも問題視した。
われもわれもとばかり、多くの省庁がアベノミクスを推進する名目でつくり、一六年度末時点で十六法人に上った。国が出資や融資した金額は七千八百十二億円。
税金を投じる以上は政策効果とともに業務の健全性が求められるはずだ。だが、このうち十一法人では非効率な運営や損失の発生により国民負担が発生する可能性があると指摘した。
天下り先の確保といった省益も絡み、安易に設立して無駄遣いの温床となっている実態が明らかになったといえる。
行政の無駄排除や議員定数の削減は、消費税を10%まで引き上げることを決めた「社会保障と税の一体改革」で与野党が国民に約束したことである。
それを反故(ほご)にしては、税率はどこまでも上がりかねない。国会や行政府は検査報告を真摯(しんし)に受け止め、無駄な予算の排除に全力を挙げなければならないはずだ。