<金口木舌>抑圧の矛先は - 琉球新報(2018年11月2日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-827879.html
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南米ブラジルの大統領選挙で自由社会党のボルソナロ下院議員が当選した。軍事政権を称賛し、同性愛者や女性らへの差別的発言を繰り返す同氏は「ブラジルのトランプ」と呼ばれる右翼政治家だ

▼主な争点は汚職撲滅だった。ブラジルでは2014年から検察が大規模に汚職を捜査し、ルラ元大統領を含む主要政党の政治家らが摘発された。汚職に嫌気が差した有権者の支持がボルソナロ氏に流れたといわれる
▼ただボルソナロ氏は世論調査で不支持率もトップだ。9月には同氏に反対する女性たちがサンパウロで15万人規模の集会を開いた。右派ポピュリズム大衆迎合主義)が支持を伸ばす欧米同様、社会の分断が深まっている
▼水島治郎千葉大教授は著書「ポピュリズムとは何か」で、20世紀半ばの南米諸国で左派ポピュリズムが「エリート支配から人民を解放する原動力となった」と指摘する。一方、現在主流の右派ポピュリズムの特徴として、排外主義などの「抑圧」を挙げた
▼ブラジルには約18万7千人の県系人が暮らす。8月に県人移民110周年の記念式典も開かれた。日系人の1割を占めるとはいえ、2億人を超えるブラジル国民の中では圧倒的な少数派だ
▼社会が分断を深め、しわ寄せが少数派や社会的弱者に及ぶことがあってはならない。抑圧の矛先がどこに向かうのか、絶えず注視したい。