沖縄の声 伝える 玉城さん「結束」訴え - 東京新聞(2018年10月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018100102000114.html
https://megalodon.jp/2018-1001-1002-06/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018100102000114.html

辺野古ノー」の強風が島々に吹き渡った。沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設の是非を最大の争点に三十日、投開票が行われた県知事選。故翁長雄志(おながたけし)知事の後継として建設反対派の「オール沖縄」が擁する玉城デニー衆院議員(58)が、安倍政権が全面支援する佐喜真(さきま)淳前宜野湾(ぎのわん)市長(54)を破り、事実上の一騎打ちを制した。基地負担に苦しむ沖縄に対する政権の強硬姿勢は、政権支持者からも反発を招いた。
玉城陣営の支持者百人以上が集まった那覇市内のホールでは、玉城さんも午後八時前から姿を見せ、支持者と一緒に開票を待った。NHKのテロップが流れたのは午後九時半すぎ。「やったー!」。支持者らは指笛を鳴らし、玉城さんも自らカチャーシーを踊って喜びを分かち合った。
激戦を制した玉城さんは「翁長雄志知事がこれ以上新しい基地を造らせないという思いを命を削って全うしたことが県民に宿り、後押しした。私も辺野古に新しい基地を造らせないとしっかりと脳裏に刻んでやっていきたい」と誓った。「諦めずに一致団結すれば、良い方向に進む」と明言すると、支援者たちも「そうだ」と呼応した。
八月に翁長知事が急逝したことを受け、衆院議員を辞職して急きょ立候補。保革を超えて新基地に反対する政党や団体でつくる「オール沖縄」の支援を得て戦った。翁長知事が訴えてきた「イデオロギーよりも沖縄県民のアイデンティティーを大事に」を呼び掛け、後継をアピールして競り勝った。
辺野古の新基地を巡っては翁長知事の意向を踏まえた県が八月末に埋め立て承認を撤回している。国との攻防が始まるが、玉城さんは「さまざまな行政指導をしたが、国が法律を守らなかった。とうてい民主主義国家や法治国家とは言えない。それを堂々と主張する」と述べた。ただ、「翁長さんもそうだったが、我々から対立や分断を持ち込んでいない。沖縄の優位性を高めることで国内の経済を伸ばし支えていくことについて、国としっかり協議したい。県民が認められない最たるものが辺野古の新基地で、政府に県民の思いをしっかり訴えていきたい。自立と共生、多様性を大事にしながら進めたい」ときっぱり話した。
沖縄駐留の米軍人の父親と同県の伊江島出身の母親の間に生まれた玉城さん。本名は玉城康裕で、デニーは子どものころからの愛称だ。ラジオDJなどで活躍したが、二〇〇二年に沖縄市議選でトップ当選し政界入りした。
この日、「母子家庭で育ち、高等教育を受けたわけでもないが、色々な人に支えられてきた。漠然と、いつか世のため人のために役立ちたいと思ってきた」と自らの歩みを振り返りながら、県民に尽くす覚悟を語った。 (井上靖史)