香港民主化をあきらめない 学生リーダー・黄之鋒氏に聞く - 東京新聞(2018年9月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201809/CK2018092902000120.html
https://megalodon.jp/2018-0929-1021-19/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201809/CK2018092902000120.html

【上海=浅井正智】香港の雨傘運動発生から四年となった二十八日、香港島の政府庁舎前で民主派ら約三百人が集会を開き、あらためて「真の普通選挙」の実現を求めた。
集会は、四年前に警官隊がデモ隊に向けて催涙弾を発射した様子を、水蒸気を上げ、当時の音声を流して再現。参加者は運動のシンボルとなった黄色い傘を広げ、「雨傘精神を忘れるな」と訴えた。
独立派の政治団体香港民族党」に活動禁止命令が出たことにも「香港人の結社の自由を制限するものだ」と批判の声が上がった。
ただ、以前は千人以上いた参加者も激減。民主派は国慶節の十月一日にもデモを計画し、市民に参加を呼びかけているが、締め付けが強まる中、市民の関心は薄れつつある。
香港の政治評論家、劉鋭紹(りゅうえいしょう)氏は「市民は雨傘運動に対する中国政府の圧力を見て、政府と対立して得られるものはないと感じた。それがこの四年間の変化の一つだ」と話した。

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香港の大規模民主化デモ「雨傘運動」発生から二十八日で四年。中国の習近平(しゅうきんぺい)政権による香港への締め付けが強まる中、学生団体リーダーとして運動を主導した黄之鋒(こうしほう)氏(21)は本紙の取材に「一国二制度ではなく、一国一・五制度になった」と述べ、中国政府を批判した。運動の参加者らがつくった政党「香港衆志」の幹部でもあり、「民主主義を求める闘いをあきらめない」と強調した。 (香港で、中沢穣、写真も)

−雨傘運動から四年。

「雨傘運動は要求を実現できなかったが、世界の人々に強い印象を与えた。とりわけ、人権を尊重しない中国モデルの台頭を恐れる周辺国の人々は、香港の人々が政治的、経済的自由のためにいかに闘ったかを理解してくれていると思う」

−四年間での変化は。

「(香港の高度な自治を定めた)一国二制度はすでに機能不全に陥り、一国一・五制度になった。この四年間で雨傘運動のリーダーが投獄されたり、香港立法会(議会)への立候補資格を剥奪されるなど、香港は厳しい圧力に直面している。香港の人々はもともと政治的意識が高いが、今は疲労感と絶望を感じている」

−今後の活動は

習近平政権が続く限り、香港の民主主義にチャンスはないだろう。しかし私たちは決してあきらめない。短期間で大きな変化を起こすことは難しいが、民主主義の実現は長い闘いだ」

−独立を訴える香港民族党が活動禁止になった

「まず『独立派』が標的にされた。次は(住民投票で香港の将来を決することを目指す)『自決派』だろう。最後は民主主義を求める人々も標的にされる恐れがある。(自決を掲げる)香港衆志も活動が禁止されるかもしれないが、なんとか活動を続ける方法を見つけたい」

<黄之鋒(こう・しほう)> 1996年香港生まれ。雨傘運動に民主化団体「学民思潮」を率いて参加。ハンストを決行し、香港政府に対話を要求するなどリーダー的役割を果たした。雨傘運動に関連し、違法集会参加や法廷侮辱などの罪で個別に起訴され、法廷侮辱罪については高裁が今年1月、禁錮3月の実刑判決を言い渡した。2016年、雨傘運動の参加者らでつくる政党「香港衆志」の創設に加わり、秘書長(事務局長)を務める。

<雨傘運動> 香港行政長官選で、中国政府が意に沿わない候補者を事実上排除する制度を導入したことに反発した若者らが、2014年9〜12月に起こした大規模な抗議行動。「真の普通選挙」を求め、79日間にわたり主要幹線道路を占拠。警官隊が発射する催涙弾に対し、デモ参加者が身を守るため雨傘を用いたことからこの名前が付いた。