沖縄県知事選“学会の乱”で玉城氏支持が続々 安室奈美恵の翁長コメントに官邸「けしからん」 (1/2) - AERA dot. (2018年9月28日)

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9月30日の投票日まで3日に迫った沖縄知事選は、オール沖縄が支援する玉城デニー氏(58)を、自民、公明、維新、希望推薦の佐喜真(さきま)淳氏(54)が僅差で追い上げる大接戦を繰り広げている。

佐喜真氏が子育て、経済、地域振興などの公約を掲げれば、玉城氏は「新時代沖縄」として、人材育成、文化、観光などに重点を置く。基地問題では玉城氏の辺野古移設反対に対して、佐喜真氏は日米地位協定の改定を政府と対等に交渉するとぶち上げた。
佐喜真陣営を応援する自民は、菅義偉官房長官自ら足繁く沖縄へ通い、知名度の高い小泉進次郎衆議院議員小池百合子都知事などを次々に送り込んだ。一方、玉城氏は翁長雄志知事の後継者をアピールしながら、オール沖縄の支持層から幅広く票を取り込む狙いだ。
公明党は自主投票だった前回の知事選と違い、今回は佐喜真氏支持。選挙期間中に支持母体の創価学会員を大量に沖縄へ送り込んでいる。
「本土から約5000人を沖縄入りさせ、学会員や自民党員を投票所へ連れて行く役割を負わされています。そのため、選挙期間中の沖縄のレンタカー予約はたくさんの学会員で埋まっています」(創価学会関係者)
ところが、学会員でありながら公然と玉城氏を支援する人たちが現れた。きっかけを作ったのは浦添市の野原善正氏(58)。30年以上に渡る創価学会員だが、玉城氏の街頭演説で学会のシンボルである三色旗を降りながら支持を打ち出したのだ。

野原氏が語る。
「佐喜真氏は日本会議とも関係が深く、平和思想を説いた創価学会池田大作名誉会長の考えとは真逆な人。そんな人が知事になれば沖縄が大変なことなってしまう。そもそも公明党自体が自民べったりでおかしくなってしまった。いま声を上げないといけないと思い、玉城氏の支援に回ったのです。10万人とも言われる沖縄の学会員が、少しでも多く玉城氏に投票して欲しい」
組織力の強い創価学会で、党が決めたことに公然と反対するのは相当な勇気がいる。野原氏は「すでに村八分状態」というが、YouTubeツイッターを立ち上げて自らの考えを明らかにすることをやめない。
野原氏に刺激を受けた学会員も出てきた。9月22日に開かれた玉城氏の1万人集会に地元や本土から学会員が参加し、三色旗を降る姿が見られたのだ。
那覇市在住の50代の男性学会員は「いままで学会の選挙活動には協力してきたが、平和思想をないがしろにするような候補を応援する今回ばかりは協力できない」
また、千葉県からたまらず沖縄に駆け付けたという50代の女性学会員は、「玉城氏を支持するというと周りの学会員にはだいぶ怒られた。だけど、いま勇気を出して言わないと沖縄がダメになってしまう」と話した。
一方、沖縄県は8月、名護市辺野古の埋め立て承認を撤回するなど政府と対立姿勢を強めているだけに、自民は佐喜真氏を是非とも勝たせたい。それを象徴するような話がある。
沖縄出身で5月に県民栄誉賞を受けた安室奈美恵さん(9月16日に引退)は、翁長雄志前知事が亡くなった翌日にこんなコメントを発表した。
<翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております>
沖縄の若者に大きな影響力を持つ安室さんだけに、翁長氏寄りとも読めるこのコメントを面白く思わなかったのが官邸サイド。地元に怒りをぶちまけたと言うのだ。社民党照屋寛徳衆議院議員が言う。
「官邸が沖縄の建設業者へ電話を入れ、『安室奈美恵は、あんなコメントを発表してけしからん』と不満を漏らしたのです。そんなことを沖縄の人たちに言う官邸こそ、奢り高ぶっていてけしからんのではないでしょうか」
こうした自民党の奢りを指摘する声は、自民内部からも聞こえてくる。
「佐喜真氏は沖縄の携帯料金を4割下げると言ったが、あれこそ沖縄県民を金で釣ろうとバカにしている。それを言わせた安倍政権が奢ってしまっている証拠です」(中堅議員)
選挙戦もいよいよ終盤だが、今回の知事選では期日前投票が際立って多い。9月26日現在で全体の約2割に当たる1万6183票が投票を済ませた。これは4年前の知事選と比べて2・4倍多い。期日前投票数は組織票の多さに比例すると言われるが、今回は投票日に台風24号が沖縄に接近すると予想され、両陣営や選挙管理委員会が早めの投票を呼び掛けていることもある。
果たして、県民はどちらを選ぶのか。(ジャーナリスト・桐島瞬)