(政界地獄耳)「聞く耳持たない」スポーツ界も国会も - 日刊スポーツ(2018年9月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201809040000190.html
http://archive.today/2018.09.04-115613/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201809040000190.html

★国連人種差別撤廃委員会は先月30日に発表した対日審査報告書で、ヘイトスピーチ対策の強化などを勧告した。ヘイトスピーチは16年に対策法が成立したものの改善には至っていない、と指摘した。加えて被害者を特定できない差別的言動の禁止、集会でのヘイトスピーチや暴力の扇動の禁止、ネット上のヘイトスピーチの効果的対策の策定、技能実習適正化法の履行、外国籍者の住居や雇用の権利保障、高校就学支援金制度を朝鮮学校にも適用すべきなどが盛り込まれている。

★また15年の日韓慰安婦合意は「元慰安婦の立場が十分に反映されていない」とし、日本政府に問題の解決を促した。他国のロビーイングが功を奏したものも垣間見えるが、いずれにせよ国連は対策が限定的で不十分と指摘している。これに対して官房長官菅義偉は「慰安婦問題は『人種差別撤廃条約』適用対象外のテーマ。国連委員会が取り上げる事案ではない」と問題をすり替え議論を避けた。

★だが、日本の国会議員の主義主張には国連がヘイトや差別だと指摘しているテーマを自らの政策として掲げている者も多い。政治家の暴言や失言についても、最近では本人が出てきて謝ることすらしないし、誤解だとか言葉足らずとか、あたかも説明不足かのような言い逃れで、自らの偏った差別感や前近代的な思考を相変わらず言い続ける議員も多い。またそれを考え方にはいろいろあるなど価値観の多様性にすり替える者もいる。勉強不足や偏った価値観を信じる彼らが1つの論を持っているかのような錯覚を起こさせ、事態を矮小(わいしょう)化しようとする議員も多い。世の中の事件でも優生思想を信じるものや、昨今のスポーツ界の問題も昔は許されていたことへの賛歌にも近い行動をとる指導者がもてはやされていたことを示唆している。国連の指摘を真摯(しんし)に聞く耳すら持たない国会議員の罪は重い。(K)※敬称略