(政界地獄耳)立場の違う人たちからの敬意 - 日刊スポーツ(2018年8月10日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201808100000235.html
http://archive.today/2018.08.10-013527/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201808100000235.html

★政治家とは命を擦り減らす仕事だと改めて感じさせられた。沖縄県知事翁長雄志が志半ばで亡くなった。がん闘病中の67歳。早すぎる死だった。権力と戦うと一口で言うが、時の政権中枢や米国の安全保障戦略を向こうに回して県民を守ろうとするのだから大変なことだ。知事は元来自民党沖縄県連幹事長を務めた人物。共産党委員長・志位和夫が「不屈の信念と烈々たる気概で辺野古新基地反対を貫いた4年間のたたかいに、深い敬意と感謝をささげます。保守・革新の垣根を越えた共闘にこそ沖縄の未来がある。ご遺志を継ぎたたかう決意です」とツイッターに記したように、保守・革新の垣根を越えたところに政治があるのではないか。
★5月23日、引退を表明している沖縄出身の歌手・安室奈美恵に県民栄誉賞が授与されたが、闘病中だった知事は授与に出席し安室に表彰状を手渡した。安室は訃報に接し、ホームページで「翁長知事の突然の訃報に大変驚いております。ご病気の事はニュースで拝見しており、県民栄誉賞の授賞式でお会いした際には、お痩せになられた印象がありました。今思えばあの時も、体調が優れなかったにも関わらず、私を気遣ってくださり、優しい言葉をかけてくださいました。沖縄の事を考え、沖縄の為に尽くしてこられた翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております」と哀悼の意を表した。
★8日、米国務省の報道担当官もお悔やみの言葉とともに「日米関係に対する翁長知事の貢献に感謝しているし、沖縄県民にとって重要な問題をめぐる翁長氏との長年の協力をとても大切だと考えてきた。この困難な時期にあって、われわれの思いと祈りは翁長氏の家族や沖縄県民と共にある」と語ったという。元県知事・大田昌秀、元沖縄開発庁長官・上原康助、元官房長官野中広務、沖縄本土復帰に尽力した福地広昭と相次いで他界しているが、いずれも広い視野に立った政治家だった。立場の違う人たちに敬意を示される政治家へ敬意を表したい。合掌。(K)※敬称略