(通常国会閉幕)まん延する数のおごり - 沖縄タイムズ(2018年7月21日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/286872
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「官邸1強」とも呼ばれる権限の集中、衆参両院とも3分の2を超える与党勢力、小党分立でまとまりを欠いた非力な野党…。
この三つがそろったとき国会はどういうことになるか。それを露骨な形で示したのが第196通常国会だった。
国会が本来果たすべき「少数意見の尊重」も「政権の監視」も、「熟議」による合意形成も、すべて数の力に押しつぶされてしまった。
国会そのものが専制的な政治にのみ込まれ、その舞台になってしまったのだ。
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法は20日夜、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数により可決、成立した。
自民党が提出した参院選挙制度改革に関する改正公職選挙法は18日の衆院本会議で可決、成立しており、22日に会期末を迎える国会は、事実上20日で閉幕したことになる。
IR整備法はカジノを賭博罪の適用対象からはずし合法化するもので、当面、全国3カ所を上限に整備する。
ギャンブル依存症対策や治安対策に関する議論は深まらず、国民の不安はまったく解消されていない。
政府が期待する税収を生み出すためには、相当数の人が相当の額をギャンブルに投じなければならない。ギャンブル漬けの人が増え、借金問題が深刻化するおそれがある。
西日本豪雨の災害対応に全力投球しなければならない国土交通省の大臣が、カジノ法案を通すために国会にくぎ付けになる−健全な「常識」が働かない現状は危うい。

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選挙制度は民主主義の土台であり、主権者である国民の意思が適切に反映されるような内容でなければならない。 憲法改正による「合区」解消をもくろんできた自民党は、国会終盤になって唐突に独自案を持ち出した。
成立した改正公選法は、有権者を置き去りにしたつぎはぎだらけの内容で、複雑な制度をいっそう分かりにくくしてしまった。 
比例代表の定数を4増(3年ごとの改選では2増)し、各党の名簿に従って当選者を決める「特定枠」を設けたことが大きな特徴だ。
鳥取・島根」「徳島・高知」の合区で、公認からもれた現職議員を「特定枠」で救済する狙いがある。
抜本改革にはほど遠い、究極の党利党略改革である。
今国会は、「官邸1強」政治の弊害がさまざまな形で露呈した国会でもあった。

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森友・加計学園問題に象徴されるように、与党は安倍晋三首相に火の粉が降りかかるのを防ぐため、国民が求める疑惑解明には終始、消極的だった。
公文書の改ざん問題やセクハラ問題が表面化しても、麻生太郎財務相は、その職にとどまり続けた。森友・加計問題がこのまま尻すぼみになれば、官僚の忖度(そんたく)はますます強まるだろう。
国会は行政権力の暴走やおごりをチェックする役割を担っている。国会の本来の機能を取り戻すことが急務である。そのためにはまず自民党が変わらなければならない。