日米地位協定 動かぬ改定 独伊は事故を機に見直し - 東京新聞(2018年7月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018070302000134.html
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沖縄県うるま市で二〇一六年に女性会社員が元米軍属の男に殺害された事件で日米両政府は、日米地位協定に基づかない形で、遺族に賠償金を支払うことで合意した。在日米軍の特権的な立場を定めた地位協定は、沖縄で米軍絡みの事件・事故が後を絶たない原因とされる。県は、日本と同じ第二次世界大戦の敗戦国であるドイツ、イタリアが米国と結んだ協定と比べて、抜本的な改定を訴えている。(村上一樹)
うるま市の事件後、日米は軍属の範囲を縮小する補足協定を結んだが、地位協定の見直しに踏み込まなかった。賠償金を巡っても、日本側は地位協定に基づく賠償を求めたが、米側は、元米軍属の男は「米軍の被用者」に当たらないと主張。協定外の「自発的、人道的な支払い」にだけ応じた。不足した場合、日本側が見舞金として対応する。
沖縄では米軍絡みの凶悪事件や米軍機の事故が繰り返され、県は地位協定に問題があるとして改定を求め続けてきた。その一環として、米軍が大規模に駐留するドイツとイタリアに職員を派遣し、両国と米国との地位協定を調査。県のサイトで公表した。
ドイツでは東西統合前の一九八八年、航空ショーで米軍機が墜落し、七十人以上が犠牲になる事故が発生。これをきっかけに九三年、地位協定が改定された。米軍機にもドイツの航空法が適用され、夜間飛行が制限される。訓練はドイツ航空管制の事前許可が必要。
米軍基地内に自治体職員の立ち入り権も認められ、ドイツの警察官が常駐。騒音軽減委員会が設置され、自治体の意見を米軍が聴く仕組みもある。
イタリアでも九八年、米軍機がロープウエーのケーブルを切断してスキー客二十人が死亡したことを受け、その後、新たな協定を締結。米軍の訓練の許可制度や、訓練飛行への規制が大幅に強化された。
対照的に日米地位協定は六〇年の締結以降、一度も改定されていない。原則として米軍に国内法は適用されず、訓練の詳細情報は知らされない。地域の委員会も設置されていない。沖縄県翁長雄志(おながたけし)知事は先の「慰霊の日」平和宣言で「県民は、広大な米軍基地から派生する事件・事故、騒音に苦しみ続けている」と訴えた。
しかし、安倍政権は協定の見直しに消極的。外務省の担当者は「日米地位協定が、他の地位協定に比べて不利ということはない」と言い切る。
イタリアのディーニ元首相は、沖縄県の調査にこう話したという。「米国の言うことを聞いているお友達は日本だけだ。沖縄が抱える問題は、日本の政治家が動かないと解決が難しい」