承認撤回と県民投票 県民的議論を尽くそう - 琉球新報(2018年6月19日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-741335.html
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名護市辺野古の新基地建設に向け、沖縄防衛局が土砂投入の開始日を8月17日と通知したことを受け、県は埋め立て承認撤回や県民投票の時期を巡る検討を本格化させている。土砂が投入されると自然環境への影響が大きいだけに、緊迫してきている。秋の県知事選への影響も視野に戦略が練られている。
翁長雄志知事は「環境保全措置などについて看過できない事態となれば、ちゅうちょすることなく必ず撤回する」と明言している。
土砂投入前に撤回した場合は環境へのダメージを最小限にできる。一方で国の法的措置で早期に工事が再開したり、裁判で敗訴したりした場合、「知事選前に重要なカードを失う」との懸念もあるという。土砂投入後に撤回した場合は、工事を止めて政府と争っている状況で知事選に臨める「メリット」があるが、環境へのダメージは計り知れないと県はみている。
県は、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票は知事選後と見込む。翁長知事は任期中の撤回を明言しているため、撤回は投票結果ではなく、環境保全策の欠陥などを根拠にする可能性が高いという。
 撤回、県民投票いずれも辺野古新基地建設を止める「伝家の宝刀」といわれているだけに、県は最大限の効果を狙う時期を考えているだろう。
しかし、果たしてそれらの戦略は県民の意思をきちんと酌んでいるだろうか。知事選や国政選挙で「辺野古新基地ノー」の民意は示されてきた。知事に早期撤回を求める声も上がって久しい。そうした民意は尊重されているだろうか。
県民投票にしても、政府が土砂投入を急ぐ中、実施判断の「タイムリミット」として市民が署名運動に走りだした。活動は徐々に広がってはいるが、見切り発車感は否めない。連合沖縄が中心となって1996年に実施された県民投票の際には、自治会レベルにも根回しした上でスタートした。草の根に理解が広がり運動を押し上げるのが本来の姿である。
とはいえ、撤回も県民投票も、自治や民主主義における重要な権利行使であり、意義は大きい。これを機に県や関係団体は県民を置き去りにせず、県民との対話の場を増やしてほしい。県民は何を求めているのか意見を聞き、理解を得る努力をすべきである。
スコットランドの独立を問う住民投票など海外の事例を見ると、小規模集会を各地で開いたり、1対1の対話を徹底したりするなどして投票への参加を促した。スコットランドでは若者間で議論が活発化し、学生1万人が参加したテレビ討論も行われた。
辺野古」県民投票の会には多くの若者が参加している。若者ならではのパワーを発揮し、沖縄の未来を真剣に話し合う機会を多くつくり出してほしい。県民投票は沖縄の自己決定権行使の重要な手段でもある。