(基地と環境対策)国内法適用の手法探れ - 沖縄タイムズ(2018年6月7日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/263604
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米軍基地ではさまざまな有害物質が日常的に使われているが、その種類も量も使用履歴も、あきらかにされていない。汚染事故が発生したときの立ち入り調査も、米軍の裁量に委ねられているのが現実だ。
2016年1月から17年11月までの間に米軍嘉手納基地で、有害物質の流出事故が95件発生し、確認されているだけで2件が基地の外に流れ出していたことが分かった。
本紙のジョン・ミッチェル特約通信員が情報公開制度を利用して入手した同基地の内部資料であきらかになった。
有害物質はジェット燃料、ディーゼル油、汚水、泡消化剤などで、流出総量は少なくとも6万3366リットル(ドラム缶317本分)に達する(4日付本紙1面)。
「以前は基地内の事故でも報告があった。最近、それがなく事故が減っているのかと思った」と嘉手納町の當山宏町長は言う。
事故の通報がないというのは、現行制度の欠陥である。
基地の中で何が起き、どう処理されたかが分からなければ、自治体は有効な対策を取ることができない。
こうした現実は、沖縄では周知のことであり、決して目新しい話ではない。基地が「ブラック・ボックス」になっているのだ。
事故の情報開示を義務づけ、自治体による迅速な対応が可能となるよう事故発生時の基地内立ち入りを原則としてすべて認める−そのための県、県議会、市町村あげての取り組みが必要だ。

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環境問題の情報共有や立ち入り調査の円滑化を柱とした日米環境補足協定が発効したのは15年9月のことである。 政府は、地位協定の実質的な改定にあたると自画自賛したが、騒音協定同様、環境協定にも抜け穴が用意されており、発効当初から実効性が疑われてきた。 
例えば、環境事故が発生した場合や、返還予定地の現地調査(文化財調査を含む)のための立ち入りについて、協定は裁量権を留保している。
「日本側の申請に妥当な考慮を払う」としつつ、「米軍の運用を妨げる」場合や「施設・区域の運営を妨げる」場合には、認めるかどうか米軍が判断する、というわけだ。
環境省は1978年から基地内で水質、大気、ばい煙などの調査を実施してきた。ところが、2014年度以降、理由もあきらかにされないまま基地内調査が中止され、基地外での調査に変更されている。
後ろ向きの「ブラック・ボックス化」の動きというしかない。

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米軍基地の環境保護対策は、在日米軍が作成する「日本環境管理基準」(JEGS)に基づいて行われる。
だが、在日米軍には国内の環境法令が適用されない。米軍は基地に対する排他的な管理権を持っているためJEGSが実際にどのように運用されているかはっきりしない。
環境対策の透明性を確保するためには県も交えた協議機関に大きな権限を与え、地元の意向が最大限生かされる仕組みがなければならない。それは可能なはずだ。