日立の英国原発 国策のツケは国民に - 東京新聞(2018年5月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052902000160.html
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3・11以降、原発は世界中で“不良債権化”しつつある。新規建設は、「国策」でなければ成り立たず、企業は巨大なリスクを背負い込む。英国で原発新設に乗り出す日立。成算はあるのだろうか。
時代の流れに、どこまで逆らうつもりだろうか。
向かい風に帆を揚げて、急流をさかのぼろうとする小舟のようなものではないか。「成長戦略」という名目の小舟である。
グレートブリテン島中西部のアングルシーという島に、二〇二〇年代前半の運転開始をめざして、百三十万キロワット級の原発二基を建設する。
総事業費は三兆円以上。日立は六年前、英国の原発事業会社を買収して子会社化、資金難に陥った英国側の事業を引き継いだ。
福島原発事故後の建設費急騰に音を上げて、日立は日英両政府に資金支援を要請した。
最新の資金計画では、北海油田・ガス田の枯渇を見越し、先進国で唯一、原発新設に積極的といわれる英国政府が、二兆円の融資を提示した。
残りを日立と英政府や英企業、日本の政府系金融機関や電力会社などが出資し、日立などの出資分は事実上、日本政府が債務保証するという方向で交渉が進んでいる。これも「国策」だということだ。国策のつけは国民に回される。
安全対策を考えれば、原発は割に合わない。既に世界の常識だ。
フィンランドのオルキルオト原発3号機は、総事業費が当初見込みの三倍近くに膨らんで、完成は現時点で十年遅れ。フランスのフラマンビル原発3号機の事業費も同様で、この二基のつまずきが世界最大の原発メーカーであるフランスのアレバ社を事実上の破綻に追い込んだ。原子力事業子会社「ウェスチングハウス(WH)」の破綻が東芝を土俵際まで追い詰めたのも記憶に新しい。
再生可能エネルギーの台頭により、欧州ではすでに原発の電力は市場競争力を失った。
英国政府は原発の電気を一定期間、高額で買い取るシステムを導入し、建設費を国民に転嫁した。原発事業はもはや、政府の後押し、つまり国民の負担なしには成り立たない。安全面だけでなく、経済的にも巨大なリスク、いわば“泥舟”なのである。
3・11の当事者でありながら、さまざまなリスクを押して原発にこだわる日本政府。真意はどこにあるのだろうか。