http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/229198
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安倍晋三首相夫妻らの関与はきっぱり否定しながら、自身の関与については何一つ明らかにしなかった。国民の疑問に答える場だったにもかかわらず、疑惑は一層深まった。
森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざん問題で、改ざん時に理財局長だった佐川宣寿氏に対する証人喚問がきのう衆参両院で行われた。
質問は改ざんの動機や経緯、指示の有無などに集中。にもかかわらず佐川氏は「刑事訴追の恐れがあるので答弁を差し控えたい」を繰り返した。
誰が、何のためにという核心部分だけでなく、改ざん前の文書に目を通した時期などについても証言を避けたのだ。
喚問後に、森友問題を捜査している大阪地検特捜部から事情聴取されるのを意識してのことだろう。
議院証言法4条は「証人又はその親族等が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは証言等を拒むことができる」と規定している。
権利とはいえ、改ざん前の文書に首相夫人、昭恵氏の名前があったことの印象を聞いた質問にも口を閉ざしたのは、議院証言法の拡大解釈ではないか。
「国民の行政への信頼を揺るがし、誠に申し訳ない」と深く頭を下げる場面もあったが、50回以上に及ぶ証言拒否は自己保身としか映らず、真相解明を求める国民の期待を裏切った。■ ■
文書改ざんについて佐川氏は「財務省理財局の中で行った」と述べ、安倍首相や官邸側からの指示をきっぱり否定した。「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」とした昨年2月の首相答弁の影響も「ない」と答えている。政治家の関与を否定する政府と歩調を合わせた格好だ。
それではなぜ、14種類もの決裁文書が「森友優遇」をうかがわせる表現に書き換えられ、昭恵氏や政治家に関わる記述が消されたのか。国有地の大幅値引きという土地取引そのものの疑念も解明されていない。
核心部分を語らなかった佐川氏の証言を、そのまま受け入れるのは難しい。全容解明どころか闇の深さを感じさせる証人喚問だった。
佐川氏の喚問が不発に終わった以上、真相解明には森友学園が計画していた小学校の名誉校長だった昭恵氏や夫人付政府職員、財務省幹部の国会招致が不可欠だ。■ ■
佐川氏の証人喚問で自民党の中にはケリがついたという空気があるが、それは違う。疑惑は晴れるどころか深まっており、追及の手を緩めるわけにはいかない。
報道各社の世論調査で、安倍内閣の支持率が急落しているのは、改ざんに対する国民の不満の表れである。
職員への聞き取りなどを進める財務省の「身内」の調査には限界があり、中立・公正かつ客観的な調査が求められている。
国会の中に第三者による調査委員会を立ち上げ、真相究明を図る必要がある。