http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018032602000157.html
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安倍晋三首相の前のめりが際立った。自民党は九条への自衛隊明記など四項目で改憲を目指すが、政治や行政に対する国民の目は厳しい。改憲に力を傾注するよりも信頼回復を優先すべきでないか。
自民党の定期党大会がきのう東京都内で開かれた。党総裁を務める安倍首相は演説で「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうではないか」と九条を含む改憲の実現に向けた強い決意を示した。
自民党は改憲を結党以来の党是としてきた。昨年十月の衆院選では、自衛隊の明記▽教育の無償化・充実強化▽緊急事態対応▽参院の合区解消−の四項目を初めて政権公約の重点項目に掲げた。
党大会前に改憲条文案の取りまとめを急いだのも、首相が目指す二〇二〇年までの改正憲法施行に向けて党内手続きが進んでいることを印象づけ、議論に弾みをつける狙いがあるのだろう。
しかし、首相を取り巻く政治環境は以前より厳しくなっている。
昨年の党大会前に実施された共同通信社の全国電話世論調査では内閣支持率は61・7%だったが、今月中旬には38・7%に。特に、二週間前から9・4ポイント急落した。
その要因の一つは学校法人「森友学園」への国有地売却問題と財務省の決裁文書改ざんである。
首相は演説冒頭「行政に対する信頼を揺るがす事態であり、責任を痛感している」と陳謝したが、国有地がなぜ格安で売却されたのか、決定過程に首相夫妻らの関与や影響はなかったのか、文書改ざんはなぜ行われたのかなど、国民の疑問は全く解消されていない。
この一年間、政府は国会に対して改ざんした資料を提示し、官僚は偽りの答弁を繰り返してきた。こんな状況では、政治や行政に対する不信感が膨らむのは当然だ。
首相は自身や昭恵氏の関与や影響を繰り返し否定するが、行政府の長としての責任で、真相解明の先頭に自ら立つべきではないか。
そもそも自衛隊明記など四項目に、改憲しなければ国民の生命や平穏な暮らしが著しく脅かされる切迫性があるのか。条文案の内容も妥当とは言い難い。
共同通信社の最新世論調査では首相の下での改憲に51・4%が反対する。国民が望んでいない改憲に政治的労力を費やすよりも、政治や行政への信頼回復に努めることが先決ではないか。首相がたびたび言及するように「民信なくば立たず」。政治は民衆の信頼なくして成り立たない、である。