(特別養子仲介)子どもも母親も幸せに - 沖縄タイムズ(2018年3月5日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/217767
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特別養子縁組」を仲介する県内初の民間団体が設立された。
望まない妊娠による悲劇をなくすためにも、継続的な支援で制度への理解を広めてほしい。
発足したのは一般社団法人「おきなわ子ども未来ネットワーク」。子どもの貧困対策や母子支援に取り組むメンバーが、予期せぬ妊娠に悩む女性の相談に乗るほか、貧困などの事情から親元で育てられない子どもを家庭的な環境で育てる特別養子縁組へとつないでいく。
3年近く前、うるま市の団地で生後間もない赤ちゃんが置き去りにされる事件があった。保護責任者遺棄の疑いで逮捕されたのは当時中学3年だった女生徒。自宅トイレで出産し、「どうしていいか分からなかった」という。
おととし夏には、那覇市の繁華街のベンチに乳児が遺棄される事件が発生した。へその緒が付いたまま、生後1〜2日とみられる赤ちゃんだった。
親の庇護(ひご)なしに生きられない小さな子を置き去りにする行為は許されるものではない。しかし自宅トイレで産み落としたり、自分でへその緒を処理するというのは、妊娠を誰にも告げられず、追い詰められた末のことだろう。
身近に相談できる相手がいて、必要な機関とつながっていれば、別の道を選択することもできたのではないか。
どうしても育てられない場合、子どもを大切に育ててくれる人に託す特別養子縁組を、双方が幸せになる社会資源として機能させたい。

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特別養子縁組は、原則6歳未満の子どもを養父母と縁組し、戸籍上も実子と同じ扱いとする制度だ。児童相談所のほか民間事業者が仲介し、4月からは事業者を許可制とする養子縁組児童保護法が施行される。
厚生労働省の調査によると、2015年度に民間事業者が仲介した特別養子縁組は161件、児童相談所が手掛けた縁組は306件(県内3件)だった。
望まない妊娠では母子手帳ももらわず、妊婦健診にも通わないなど、行政の支援から漏れるケースが少なくない。
ここ数年、特別養子縁組の成立数が大きく伸びているのは、赤ちゃんの命を救おうと手弁当で活動する民間団体が、その「受け皿」となっているからだ。
妊娠段階から関与する未来ネットワークの活動を期待をもって見守っていきたい。

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児童虐待の増加などを背景に、政府は特別養子縁組を5年で倍増させ、年間千件以上の成立を目指すとの目標を掲げている。
家庭的な環境での養育を推進するとした改正児童福祉法を踏まえ、特定の大人と「愛着」を育むことを重視している。
だが現実には、実父母が育てられない子どもの8割以上が児童養護施設などで暮らす状況が長く続く。
施設中心養育からの脱却には、養父母支援を充実させ、担い手を育てていくことも不可欠だ。