米国の銃規制 若者の声を受け止めよ - 朝日新聞(2018年2月25日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13375811.html
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「本当に私たちを守る気があるなら、とっくに銃規制が強まっていたはずだ」
米国フロリダ州の高校で17人が犠牲になった銃乱射事件を機に、多くの高校生ら若者が全米で怒りの声を上げている。
トランプ大統領と議会は今度こそ、重い腰を上げねばならない。若者らの悲痛な叫びを受け止め、実効性のある規制に向けて行動を起こすべきである。
だがトランプ氏の対応は相変わらず鈍い。事件が起きた高校の生徒らと面会しても、言及したのは小手先の対策だった。
銃を購入する際の身元や精神状態のチェック強化や、ライフル銃の購入年齢の引き上げといった点は、かねて実現できたはずの課題である。
同時にトランプ氏は、教員による銃の携行に前向きな考えを示した。銃の権利擁護派の主張でもある。規制よりも、銃の利用を広げることが安全をもたらすという倒錯した発想だ。
銃規制が大きく進まない背景の一つに、豊富な資金と政治力を抱える全米ライフル協会の存在がある。与党共和党を中心に強い影響力をもち、トランプ氏も大統領選で支持を受けた。
そもそも米国憲法には武器所有を保障する条文があり、最高裁は10年前、個人の銃所有の権利を確認した。すでに米国内には3億丁の銃が出回っている。直ちに日本や欧州並みの規制を期待するのは現実的ではない。
それでも、この異常な銃社会を少しでも是正するのは政府と議会の当然の義務である。
市民団体によると、今回は、米国で今年起きた18回目の学校発砲事件。この5年間を平均すれば、ほぼ1週間に1度、学校で発砲が起きているという。
99年のコロンバイン高校(13人射殺)、07年のバージニア工科大学(32人)、12年のコネティカット州の小学校(26人)――惨劇のたび、「世界で最も学校が危険な国」などと訴える声が議会で上がった。
しかし銃問題はきまって、共和党民主党の先鋭的な争点にされ、紛糾の末に進展をみなかった。国民の安全そのものの問題が、分断政治の中で翻弄(ほんろう)されてきた面は否めない。
もはや同じ愚は許されない。殺傷力の高い銃の販売禁止など、世論の多くが支持する施策から取り組むべきだ。学校に警備員や金属探知機を置くといった対応が必要な場合もあろう。
めざすべきは、銃が当たり前に存在する社会から脱却することだ。教員に応戦のための武装を推奨するような国は、とても正常とはいえない。