「いじめは、あなたが“病気”だから」教師に絶望した中2 新たな環境で覚悟の告白 - 沖縄タイムズ(2018年2月15日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/205238
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◆青葉のキセキ−次代を歩む人たちへ− 第2部傷を抱えて まぁ〜ちゃん寛容さ求め(中)
「いじめられているのはあなたが“病気”だから。それを治さないと、周りは変わらないし、誰も助けてくれない」
いじめの悩みを打ち明けた教師の答えに、当時中学2年のまぁ〜ちゃん(27)=本名・城間勝、嘉手納町=は言葉を失った。教師は救いの手を差し伸べるどころか、偏見に満ちた言葉で追い込んだ。「先生の言葉と絶望感は今も忘れられない」。それから大人を信頼しなくなった。
ある時、学校の廊下の隅で同級生に羽交い締めされた。声も出せず、「殺される」と本気で思った。それから死を意識するようになり、「いつか殺されるかもしれない。どうせ殺されるなら自分で死のう」と、迷惑を掛けずに死ねる場所を探したりもした。
同級生には拒絶され、大人には否定された。話し相手もいない。「学校に私の居場所はなかった」
「知っている人がいない所に行きたい」。まぁ〜ちゃんは生まれ育った嘉手納町を離れ、隣の読谷村にある読谷高校に進学した。そこにはいじめた相手もいなかった。祖父母から教わったしまくとぅばを流ちょうに話すことが話題になり、同級生らが関心を持った。「あなたのことを知りたい」というクラスメートも現れた。
「今なら本当の自分を表現できる」と青ストールを巻き、アクセサリーやメークをして登校するようになった。同級生は、それを受け入れた。
高2の時、全校集会で意見発表の機会があった。友人は「自分自身のことを書いたら」と背中を押してくれた。「今なら言えるかも」という期待と「言ったらどうなるだろう」という不安。葛藤はあったが、LGBT(性的少数者)の小中学生がいじめられ、自殺するニュースに、いたたまれない気持ちがあった。
「同世代の子たちが性の問題で命を落としている。不幸な出来事をなくしたい」と、意見発表することを決意。「私が私であるために」と題して舞台に立ち、自分の性をカミングアウトした。
気持ちは楽にはならなかった。想像以上の反響に戸惑い、告白への後悔もあった。その一方、自ら道を切り開く「覚悟」を決めた瞬間でもあった。地元を離れ、新たな人間関係がつくれたからこそ、踏み出せた一歩かもしれなかった。
まぁ〜ちゃんは当時を振り返りながら、こう語る。「いじめで追い詰められたら、身を守るため、環境を変えるなどして逃げてもいい。周りの人も、それを受け入れてほしい」=敬称略(社会部・西里大輝)