NHK受信料 強制は時代に合うか - 東京新聞(2017年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017120702000153.html
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NHKの受信料はテレビを設置したら支払い義務が生じる。最高裁大法廷はこれを「合憲」とする初判断をした。だが、今や技術革新が進む。昔ながらの方法・法規が時代に合うのか疑問にも思う。
NHKは公共放送だから、受信料は払わねばならない。放送法六四条一項にはこうある。
<受信設備を設置した者はNHKと受信についての契約をしなければならない>
この規定は努力義務だろうか、それとも強制的な規定だろうか−。受信契約を拒む東京都内の男性は「強制を認めているとすれば、憲法が保障する『契約の自由』を侵害する」と主張していた。放送法の規定は確かに契約の自由の制限にあたるように読め、憲法の「財産権の保障」など、いくつかの条文とかかわってくる。
最高裁は「国家機関から財政面で支配や影響がNHKに及ぶことのないよう(中略)広く公平に負担を求める」受信料の方式を述べたうえで、「適正・公平な受信料徴収の定め」として現行方式を「合憲」とした。初判断だ。
契約したくない人は、どうしたらいいのだろうか。やはり契約は必要である。でも双方の「意思表示の合致」がないから、NHKが判決を求めて、その確定判決によって受信契約が成立する。そのような判示をした。
だが、ちょっと待ってほしい。民放がなかった時代はテレビを設置した時点で契約義務があるという規定は意味を持っていただろう。NHKの契約とテレビの設置は同義だったからだ。その時代の遺物のような規定をまだ存続させる意義は薄れていまいか。
現代はもはやパソコンで、スマートフォンでも番組が見られる。カーナビでもテレビは映る。技術は進んだ。契約者だけに番組受信ができるよう特殊な信号を乗せるスクランブル放送も可能だ。このような放送技術を使えば、受信料を払った視聴者だけに番組を提供することもできる。
新しい時代にふさわしい受信料、視聴料とは何かをNHK自身が本気になって考えていかねばならないのではないか。
公共放送とは何か、その存在意義についても、これまで以上に意識を深めてもらいたい。
受信料拒否は、報道姿勢に疑問を持つ人もいるからでもあろう。権力とどう向き合うか。不偏不党とは政治から独立している意味である。権力をチェックする公共放送であってほしい。