<金口木舌>歴史と記憶つなぐ - 琉球新報(2017年12月2日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-623451.html
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悲痛な叫びが会場内を包む。「先生怖いよ」「お父さん助けて」「お母さ〜ん」。浦添市の当山小学校の音楽発表会。1944年8月、米潜水艦の攻撃を受け沈没した学童疎開船「対馬丸」事件を6年児童が熱演した

▼合唱や合奏だけでなく、曲のテーマを劇も交え披露することは、音楽発表会ではまれだろう。平和の尊さを訴える舞台に、まっすぐ視線を送る観衆。児童と父母、祖父母らの心がつながるのがはっきり見えた
▼上間輝代教頭によると、6年生担任らの発案で、毎年6月の「慰霊の日」前後に行う平和学習を1年を通して学べるようにし、その成果を発表した。観衆の中には、対馬丸に寸前で乗船しなかった女性もおり、目からは大粒の涙がこぼれた
▼今年3月、対馬丸の生存者や犠牲者が漂着した鹿児島県奄美大島宇検村の海岸に慰霊碑が建立された。悲劇の歴史を風化させないという地元住民らの陳情が行政を突き動かした
奄美・沖縄交流拡大事業キックオフイベントが11月にあり、翁長雄志知事が対馬丸の慰霊碑に献花した。碑を中心に平和交流の輪が広がることを期待したい
▼年月を重ね、沖縄戦語り部は減少している。史実を伝え続けることは簡単なことではない。だからこそ、平和を学び、命の大切さを感じる機会を積極的に設けたい。教育の場や地域交流の一つ一つが、歴史と記憶をつなぐ。