東海第二原発 延命は割に合わない - 東京新聞(2017年11月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017112502000162.html
https://megalodon.jp/2017-1125-1145-21/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017112502000162.html

日本原電は、来年四十年の運転期限を迎える東海第二原発の二十年延命を、原子力規制委員会に申請した。3・11後の安全強化で、原発はもはや割に合わなくなった。老朽化が進めば、なおさらだ。
日本原子力発電(原電)は国内唯一の原子力発電専業会社、原発による電気を電力小売会社に販売する卸売会社である。
沖縄を除く九電力などが出資して、一九五七年に設立された。
茨城県東海村福井県敦賀市に計四基の原発を持っていた。
このうち六六年運転開始、日本初の商業用原子炉である東海原発は、三十二年で運転終了、廃炉、解体中。七〇年稼働の敦賀1号機も廃炉が決まっている。
八七年稼働の敦賀2号機は、直下を活断層が走る恐れが指摘され、廃炉やむなしの公算大。七八年運転開始、来年操業四十年の東海第二を延命させないと、売るものがなく、電力卸売会社としての存続が困難になる。
しかし、延長の前には高い壁がある。資金繰りの壁である。
3・11後、安全対策のハードルは高くなり、四十年廃炉のルールもできた。延長は、本来例外的に認められるが、さらに特別な対策が必要とされている。
東海第二ではこれまでに、規制委に防潮堤の設計変更や、新しい循環冷却システムの設置を求められ、再稼働にかかる予算は当初の二倍以上、約千八百億円に膨らんだ。原電は、積み立てが義務付けられた廃炉資金さえ、残高不足、自前の調達は困難な状況だ。
東海第二だけではない。東京電力柏崎刈羽原発は、3・11後の新たな規制にこたえるため、これまでに六千八百億円を費やした。
これは東芝を揺るがす原発関連の損失額に匹敵する金額だ。いずれにしても尋常な額ではない。
安全を追求すればするほど、対策費は当然かさむ。
電力自由化の時代、電気料金に転嫁するにも限度がある。
東海第二の場合、三十キロ圏内に全国最多の百万人近い人口を抱えている。県都水戸市もすっぽり含まれる。事故の際、どこへ逃げればいいのだろうか。
東海第二は“割に合わない原発”の典型なのだ。無理な延長、再稼働はすべきでない。
それより原電は、実際の廃炉、解体を他社に先んじて進めている。その分野に業態を転換してはどうだろう。原発高経年化の時代。確実に、需要は伸びる。