「加計」問題審議 通り一遍の説明では - 東京新聞(2017年11月16日)

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安倍晋三首相による指示や官僚の忖度(そんたく)は本当になかったのか。学校法人「加計学園」の獣医学部設置問題。政府は認可の適切さを繰り返し強調するが、通り一遍の説明では国民の理解は得られまい。
衆院文部科学委員会が開かれ、加計学園獣医学部設置問題が審議された。林芳正文部科学相による設置認可後、初の国会論戦だ。
首相は六月の記者会見で、野党側の質問に強い口調で反論する自らの姿勢を深く反省し、「何か指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たす」と述べた。
国際会議出席のため外国訪問中の首相は、きのうの委員会には出席しなかったが、首相が強調した説明責任を、政府は十分に果たしたのだろうか。答えは残念ながら「否」と言わざるを得ない。
最大の論点はこれまで幾度となく却下されてきた獣医学部設置のための特区申請が、なぜ安倍内閣で一転、認められたのかである。
希望の党山井和則氏は、首相が「腹心の友」と呼ぶ同学園の加計孝太郎理事長は二〇一二年の第二次安倍内閣発足後、首相とゴルフや会食を十四回重ねるなど、国家戦略特区基本方針上の「利害関係」者に該当すると指摘して、認可の取り消しを求めた。
これに対し、特区を担当する内閣府の審議官は「私的な交友関係は利害関係に含まれない」と答えたが、私的な交友関係が含まれていても、特区選定に公平性・中立性は保てると言い切れるのか。
そもそも加計学園の申請は「新たな分野の需要がある」など、特区認定の四条件を満たしていたのか。政府側は国家戦略特区諮問会議で確認したと答弁したが、ならばなぜ、その後の大学設置・学校法人審議会で疑義が出たのか。
一連の手続きは「加計ありき」で進んだのではないか。とても納得のいく説明とは言えまい。
一般論として不合理な規制は撤廃すべきだ。省庁の壁があるのなら、特区制度などを活用して政治主導で突破するのも一手だろう。
それでも公平性・中立性の確保は必須のはずだ。首相が「私の友人が関わることだから、国民から疑念の目が向けられることはもっともだ」と認めざるを得ない案件を、早々に認可していいのか。幕引きは許されまい。
きのうの委員会では、与党の求めで従来よりも質問時間をより多く与党側に配分したが、政府の決定を追認し、追及する野党を批判する質問を繰り返すのなら、質問時間を増やす意味はない。