https://mainichi.jp/articles/20171018/ddm/005/070/049000c
http://archive.is/2017.10.18-000934/https://mainichi.jp/articles/20171018/ddm/005/070/049000c
働く人の過労死・過労自殺を防ぐには、長時間労働の規制のみならず、心の健康を保つ方策が企業に求められる。
厚生労働省は働く人の過労死や精神疾患の現状をまとめた白書を発表した。それによると、2016年度に過労死や過労自殺(未遂を含む)で労災認定された人は前年度より2人増えて191人に上った。
精神疾患による労災認定も増加傾向にあり、16年度は過去最多の498件だった。こうした中、働く人の心のケアに取り組んでいる企業は次第に増えて約6割に上る。
従業員50人以上の企業に対し、仕事に関して社員がどの程度ストレスを抱えているかを質問する「ストレスチェック」が2年前から義務づけられた。これが取り組みに影響していると考えられる。
厚労省が専門家に委託した調査では昨年、ストレスチェックの制度がある企業での受検率は高く、約9割に上った。高いストレスがあると認められたのは全体の約14%だった。
しかしこの調査で、職場環境が改善されたと回答した人は約6%にとどまっている。ストレスチェックの制度は導入したものの、その結果を有効に活用している企業が少ないとみられる。
実際、高いストレスがあるとされた社員と医師との面接を実施し、診断に基づいて職場環境の改善につなげた場合、社員のストレスが軽減されているケースが多い。
ストレスを生む事情は職場の種類によっても異なる。
厚労省の白書によると、バスの運転手が感じるストレスや悩みは「長時間労働の多さ」が最も多く、5割近かった。一方、トラック運転手の場合は荷主の都合で仕事時間が左右されることなどによる「精神的な緊張・ストレス」が4割を超えた。職場ごとの対策が必要だろう。
ストレスチェックの制度を生かすには、本人のプライバシーを守り、不当な配置転換などの不利益が生じないようにするのは大前提だ。
心の健康を保つには「仕事に誇りややりがいを感じる」ことが重要とする研究結果もある。
企業が働く人の立場になって、健康を本気で守ろうとしているかどうか。その姿勢が問われている。