核なき世界、実現迫る ノーベルの遺志 原点回帰の選考 - 東京新聞(2017年10月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201710/CK2017100702000135.html
https://megalodon.jp/2017-1007-0949-37/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201710/CK2017100702000135.html

国際NGOの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に対するノーベル平和賞授与は、軍縮や「非核」に向けた具体的な活動を重んじるという平和賞の原点に回帰するとともに、「核兵器のない世界」の実現を強く迫った決定といえる。
選考委員会は北朝鮮による核開発を具体例に挙げ、核兵器使用への強い危機意識を表明。同時に、米国やロシアなどの核保有国側の責任を強調し、危機回避のために「ただちに核削減方法への真剣な交渉を始めるべきだ」と促した。
委員会は、ICANが推進し、七月に国連で採択された核兵器禁止条約に触れ「核保有国も、その最も近い同盟国も支持していない」と批判。北朝鮮核開発の脅威を受けながら、米国の「核の傘」の下、条約に参加しなかった日本や韓国の姿勢にも厳しい目を向けた。
「核抑止力による平和」論も「受け身や現状維持の姿勢が議論の前進を阻んでいる」と批判した。
核廃絶に期待を込めた平和賞としては、二〇〇九年に当時のオバマ米大統領が就任一年目で授与され「実績がないのにおかしい」との批判も出た。委員会は今回、授賞理由の中であえて、アルフレド・ノーベルの遺志である(1)国家間の友好推進(2)軍備削減・廃止(3)平和会議の促進−の三点を明示。「核兵器が使われる危険性が過去になく高まっている」からこそ、原点回帰を訴えた。
その上で「条約だけで核兵器はなくならないが、地雷や生物化学兵器も国際条約で禁止していった」と望みをつないだ。実効性を確保するため「段階的でバランスが取れ、注意深く検証された」核削減も提唱した。 (ヨーロッパ総局・阿部伸哉)