衆院選 希望、民進系押しのけ 独自候補を優先 1次公認 - 毎日新聞(2017年10月4日)

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171004/k00/00m/010/175000c
http://archive.is/2017.10.04-013426/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171004/k00/00m/010/175000c


希望の党が3日に発表した第1次公認では、民進党の候補予定者だった約210人のうち、半分の約100人が排除された。希望の党が独自に準備してきた候補が優先され、民進党候補の多くが押しのけられた。
「できるだけ多くの方に公認の中に入ってほしい思いで調整作業をしてきた」。民進党玄葉光一郎総合選対本部長代行は3日の記者会見で、希望の党の第1次公認で発表した小選挙区候補191人中109人がもとは民進党公認だった候補だと強調し、理解を求めた。
しかし、候補者調整では、希望の党が独自で準備してきた候補者がおおむね公認されたのに対し、民進党側は大幅な譲歩を余儀なくされた。
191人の小選挙区候補のうち、民進党が公認候補を内定していた48選挙区で別の候補者が公認された。秋田1区の寺田学氏が比例単独候補に転出し、奈良2区で内定していた前川清成参院議員が3区に転出するなど「すみ分け」も行われたが、大半は「排除」された。
ただし、地域ごとにみていくと、希望の党の力に濃淡があることも見えてくる。
小池百合子東京都知事の地元、東京では25選挙区中21選挙区で小池氏側が求めた独自候補を擁立。神奈川県で18選挙区中10選挙区、千葉県で13選挙区中6選挙区など首都圏では小池氏側主導で擁立が進んだ。希望の党結党に加わった細野豪志環境相の地元、静岡でも8選挙区中5選挙区で小池氏側が求めた候補になった。
ところが、長野や石川などでは民進党公認だった候補全員がそのまま希望の党の公認になった。希望の党の「排除リスト」とされる名簿に記載された長野1区の篠原孝元副農相も公認された。地方では小池氏の影響力も首都圏ほどではなく、組織と人材の蓄積がある民進党側の発言力が発揮された形だ。
とりわけ昨年の参院選以来の共産、社民両党との選挙協力の枠組みが定着している地域では希望の党の影はいっそう薄い。
北海道では前職4人中、希望の党に合流したのは松木謙公氏(北海道2区)のみ。荒井聡首相補佐官(北海道3区)、佐々木隆博氏(北海道6区)は3日、立憲民主党公認での出馬を表明。無所属で戦う逢坂誠二首相補佐官(北海道8区)も選挙後に合流する。
新潟県では黒岩宇洋氏(新潟3区)が9月末にいったん希望の党入りを表明したが、支持者らの反対などで撤回した。新潟県は1次公認では希望の党の公認はゼロだった。【高山祐、松本晃】
立憲民主党には刺客 際立つ対決姿勢
希望の党の1次公認では、立憲民主党との対決姿勢が際立った。一方、無所属での出馬を表明した民進党前職の選挙区には、ほぼ候補を立てておらず、色分けが鮮明だ。
新党には既に50人弱の前職、元職、新人が参加を表明。半数程度に希望の対抗馬が立てられている。枝野幸男官房長官(埼玉5区)、菅直人元首相(東京18区)、赤松広隆元農相(愛知5区)らが対象だ。
希望の公認発表記者会見で、細野氏は、新党参加議員とは安全保障分野で距離があったと振り返り、「これまで仲間だったという意味で非常につらいが、政党のあり方の根源に関わる。正々堂々と戦うということに尽きる」と語った。同席した玄葉氏は「民進党は政権を担いうる受け皿になるには、ちょっと『左』によりすぎていた」と論評した。
「刺客」として最も象徴的なのは東京7区の長妻昭厚生労働相への対応だ。希望の若狭勝衆院議員は当初、東京都内で長妻氏の7区を除く全選挙区で公認を擁立する案を玄葉氏に提示。長妻氏の取り込みを図った形だが、長妻氏の新党参加で対応は一変した。もともと熊本2区での擁立を検討していた元熊本県議を対抗馬として立てた。
枝野氏は3日に東京都内で行った街頭演説で「生まれたばかりの政党で突っ込まねばならない。自分の選挙も心配だ」と漏らした。ただ、その後、記者団には「それぞれの党の判断だ」と述べつつ、「私は小選挙区で勝てば問題ない」と語った。
一方で希望の党は、無所属を選んだ前職には「寛容な」対応を示した。野田佳彦前首相(千葉4区)、岡田克也元代表(三重3区)、安住淳財務相(宮城5区)らの選挙区では1次公認の擁立を見送った。若狭氏は記者会見で「選挙事情を総合的に考え、スタンスを作っていく」と語った。地盤の強いベテラン前職と正面衝突するのを避けつつ、選挙後の希望の党への合流を期待する側面もありそうだ。
民進党前原誠司代表は3日、党本部で記者団に「全ての方が一緒にやれればという思いはあったが、選挙は戦いだ。希望の党、今後合流するであろう無所属議員の全員当選を目指して頑張る」と説明した。【仙石恭、松倉佑輔】