電通裁判 社長が違法残業認める 罰金50万円を求刑 - NHKニュース(2017年9月22日)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170922/k10011151791000.html
https://megalodon.jp/2017-0922-1318-45/www3.nhk.or.jp/news/html/20170922/k10011151791000.html

大手広告会社「電通」が社員に違法な残業をさせた罪に問われている事件の初公判が開かれ、山本敏博社長は違法な残業だったことを認め謝罪しました。検察は「利益優先で健康を顧みない姿勢が違法な残業を引き起こした」と指摘し、罰金50万円を求刑しました。
電通は、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労のため自殺したことをきっかけに捜査を受け、高橋さんなど社員4人に違法な残業をさせたとして労働基準法違反の罪に問われています。
検察は非公開の略式の手続きで電通を起訴しましたが、裁判所は公開の法廷で正式な裁判を開くことを決め、22日東京簡易裁判所で初公判が開かれました。
被告の代表として法廷に出た電通山本敏博社長は違法な残業だったことを認め、「高橋まつりさんの尊い命を失ったことの責任は極めて重いと思っている。本人とご家族には申し訳ない気持ちでいっぱいです。改めておわび申し上げます」と述べ、謝罪しました。
そして「以前は仕事に時間をかけることがサービス品質の向上につながり、顧客の要望にこたえることになると思っていたが、社員が心身ともに健康であることが品質の向上になると考え、改善に取り組んでいる」と説明しました。
一方、検察は、3年前に電通労働基準監督署から是正勧告を受けたあとも業務量の削減など抜本的な対策を取らず、社員がサービス残業を余儀なくされていた、と指摘しました。
そのうえで「会社の利益を優先して労働者の心身の健康を顧みない姿勢が違法な残業を引き起こした」として罰金50万円を求刑しました。
判決は10月6日に言い渡されます。
電通社長「ご本人とご遺族に改めておわび」
電通山本敏博社長は裁判のあと報道各社の取材に応じ「過去に複数回是正勧告を受けたのに労働環境を改善できず、社長として責任の重大さを改めて感じている。特に高橋まつりさんの尊い命を失ってしまった責任は本当に重く、ご本人とご遺族に改めておわびしたい」と述べました。
高橋まつりさん 自殺までの経緯
高橋まつりさんが亡くなったのはおととしの12月25日。大学卒業後、この年の4月に電通に入社してわずか9か月後でした。
まつりさんは静岡県の高校を卒業後、平成22年に東京大学に入学しました。
文学部で哲学を学び中国に留学したほか、メディア関係の仕事に興味を持ち週刊誌でアルバイトをしてインターネットに配信する動画に出演していました。
電通に就職が決まった際には「日本のトップの企業で国を動かすようなさまざまなコンテンツの作成に関わり、自分の能力を発揮して社会に貢献したい」と母親の幸美さんに話すなど希望に満ちていたということです。
しかし入社後インターネットの広告を担当する部署に配属され10月に本採用になると、連日長時間の残業が続き、幸美さんに「こんなにつらいとは思わなかった。1週間で10時間しか寝ていない」などと話していました。
みずからのツイッターには10月、「眠りたい以外の感情を失った」と書き込んでいたほか、自殺直前の12月には「死にたいと思いながらこんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」とか「死んだ方がよっぽど幸福なんじゃないか」などと書き込んでいました。
そしておととしの12月25日、クリスマスの朝に「大好きで、大切なお母さん。さようなら、ありがとう、人生も仕事も全てがつらいです。自分を責めないでね、最高のお母さんだから」と幸美さんにメールを送り、みずから命を絶ちました。
加藤厚生労働相 「監督・指導徹底する」
加藤厚生労働大臣閣議のあとの記者会見で「公判を通じて違法な長時間労働の実態がより明らかになると考えている。厚生労働省としては、長時間労働の是正に向けて、事業所に対する監督・指導を徹底するなど、これまで以上に積極的に取り組んでいきたい」と述べました。