(筆洗)「子孫へは教育を遺(のこ)し沢山(たくさん)なり」と説いたのは、福沢諭吉である - 東京新聞(2017年9月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017091502000139.html
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「子孫へは教育を遺(のこ)し沢山(たくさん)なり」と説いたのは、福沢諭吉である。
子孫に遺すべきは、教育に尽きる。金を遺すと害になるから一銭も遺さぬ。自分も金銭には余裕ができたが、子にさえ与えぬものを他人にやるわけにもいかぬ…と書いた上で、こう記した。「いずれにもこの金を用い、人の独立を助け成すの道に用いたき事なり」(『福沢諭吉の手紙』岩波文庫
「一身独立して一国独立す」。上意下達ではなく、一人一人がきちんと自分の頭で判断できるようにならねば、国も独り立ちできぬ…と説いた諭吉にとり、教育への投資こそが未来への遺産だったのだ。
そんな偉人の顔が刷られた一万円札を、この国の政府はどう使っているか。経済協力開発機構OECD)の国際比較調査によると、加盟各国の国内総生産(GDP)に占める教育への公的支出の割合は、平均4・4%。だが、日本は3・2%で最低だったという。
ちなみに、日本の大学などの授業料の高さは最高で、教員の勤務時間の長さも最高。学生や親、先生の負担は最高で政府の投資は最低…というわけだ。
首相はかつて国会で「一身独立して一国独立する。私たち自身が誰かに寄り掛かる心を捨て、それぞれの持ち場で自ら運命を切り開こうという意志を持たない限り、私たちの未来は開けない」と演説したが、「一身独立」のための投資は忘れたのか。