非核 なぜ伝わらぬ 北朝鮮核実験に被爆者らショック、憤り - 東京新聞(2017年9月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017090402000101.html
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三日の核実験強行や相次ぐミサイル発射で、核兵器開発を誇示する北朝鮮。「被害者は自分たちで最後にしてほしい」と核兵器廃絶を唱え続けてきた被爆者らからは、憤りの声が次々と上がった。核兵器の恐怖を身をもって知るだけに、高まる緊張への危惧や無力感を抱く。それでも米国や日本に対し「威嚇や力の誇示だけで解決しないことは、歴史が証明している。対話を模索してほしい」と、冷静さを失わないよう求めた。
「七十二年間、核廃絶を訴えてきた。恐ろしい結果をもたらす行為で二度としてほしくない」。広島市東区被爆者、田中稔子(としこ)さん(78)は憤りを隠さない。「断じて許されない」と北朝鮮を非難。広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之(みまきとしゆき)副理事長(75)は「被爆地がこれだけ核兵器の非人道性を訴えても伝わらないのは残念」と話した。
「思いは届かないのか」。長崎原爆被災者協議会の森内実副会長(80)は、七月の国連での核兵器禁止条約採択で、世界的に高まる核廃絶の機運を踏みにじるような北朝鮮の動きに、打ちひしがれた様子。八歳で被爆した森内さんは、爆心地付近で転がっていた無数の遺体を、今も忘れられない。「核の恐ろしさは世界中で風化している。惨禍の記憶を伝え続けなければならない」と、自らを奮い立たせた。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の藤森俊希事務局次長(73)が気掛かりなのは、日米韓の強硬姿勢が北朝鮮の自制に結び付かず「威嚇し合い、状況がエスカレート」している現状。「核戦争を起こさないため、さまざまな対話のチャンネルで外交努力をしてほしい」
核廃絶を求める国際的な署名運動を続ける長崎の被爆三世、林田光弘さん(25)も「核兵器の非人道性が共通認識となってきた今、国際的な孤立を免れない」と非難した。
その上で「核兵器使用をちらつかせるトランプ米大統領に対し、ミサイル発射や核実験が実施された。核抑止力は機能していないのは明らかだ。互いに力を誇示し続けるとどうなるかは米ソの冷戦が示している。緊張をどう緩和していくかを議論すべきだ」と訴えた。
太平洋ビキニ環礁の水爆実験で被ばくした第五福竜丸の船体を維持管理する「第五福竜丸平和協会」の安田和也事務局長は「北朝鮮はますます孤立を深めるだけ。日本には唯一の被爆国として主張する力がある。話し合いの道を開拓し続けるべきだ」と話した。