トランプ大統領 “最側近”の首席戦略官を解任 - NHKニュース(2017年8月19日)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170819/k10011104411000.html
http://archive.is/2017.08.18-204213/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170819/k10011104411000.html

アメリカのホワイトハウスは、一時、トランプ大統領の最側近とも言われ、政権内で強い影響力を発揮してきたバノン首席戦略官をトランプ大統領が解任したことを明らかにしました。
バノン首席戦略官の解任は18日、ホワイトハウスが発表した声明で明らかにされました。
アメリカ大統領選挙でトランプ陣営の選挙対策本部の責任者を務めたバノン首席戦略官は、勝利の立役者とされ、政権発足後は、中東など7か国の人の入国を禁じる大統領令を主導するなど政権内で強い影響力を発揮し、一時、「大統領の最側近」とか「陰の大統領」とも言われました。
しかし、ホワイトハウス内では保守強硬な路線とは一線を画すトランプ大統領の娘婿のクシュナー上級顧問や安全保障担当のマクマスター補佐官らとの対立が報じられ、今月、バージニア州で白人至上主義などを掲げるグループとこれに抗議するグループが衝突した事件をめぐっては白人至上主義的な立場をとるバノン氏を更迭するよう求める声が高まっていました。
ホワイトハウスでは、高官の更迭や辞任が相次いでいて、先月もスパイサー報道官とプリーバス大統領首席補佐官、それに広報責任者のスカラムッチ氏が政権を去るなど混乱に歯止めがかからない状態が続いています。
トランプ大統領としては、バノン氏を解任することで、政権内部の混乱を解消したい狙いがあるとみられていますが、支持率や今後の政権運営にどのような影響を及ぼすのか注目されます。
“トランプ政権混乱の要因”
スティーブン・バノン氏は、南部バージニア州出身で、大学卒業後、海軍への入隊をへてアメリカの大手金融機関ゴールドマン・サックスなどに勤務したあと、去年の夏まで白人至上主義的な論調が目立つ保守系ニュースサイト「ブライトバート」の会長を務めてきました。
大統領選挙期間中、バノン氏は、みずからがホストを務めるラジオのニュース番組にたびたびトランプ氏を招きこの時、不法移民対策などでトランプ氏と意気投合したと言われています。
バノン氏は、保護主義的な貿易政策や強硬な不法移民対策の推進者として知られ、「メキシコとの国境に壁を建設する」などと訴えたトランプ大統領の政策にも影響を及ぼしてきたと見られています。
また、過激な言動でも知られ、「ヨーロッパでイスラム教徒による侵略が起きている。キリスト教徒は滅びつつある」とか「アメリカは、5年後、10年後に南シナ海で中国と戦争に突入する」などと発言していました。
政権発足後は、一時、「大統領の最側近」とか「陰の大統領」とも言われ政権内で強い影響力を発揮し、雑誌タイムの表紙では大統領を背後から操る「偉大な操縦者」とも紹介されました。
しかし、ことし4月、トランプ大統領がNSC=国家安全保障会議の常任メンバーからバノン氏を外す決定をすると、政権内での影響力が低下したという見方が出ていたほか、ホワイトハウス内で保守強硬な路線とは一線を画すほかの高官との路線対立も表面化するなどバノン氏は、トランプ政権の混乱の要因になっていると言われてきました。
民主党の全国委員会 解任を歓迎
バノン首席戦略官の解任についてアメリカの野党・民主党の全国委員会は18日、「ホワイトハウスの白人至上主義者が1人減った」として解任を歓迎する声明を発表しました。
一方で声明では「これによってトランプ大統領が変わるわけではない。アメリカの多様性を代表する指導者が必要だ」と強調しています。
民主党は、バージニア州で白人至上主義などを掲げるグループと、これに抗議するグループが衝突した事件を受けて、保守強硬派として知られるバノン首席戦略官らの解任を求めていました。
共和党穏健派は歓迎 保守強硬派は失望や反発
アメリカ議会下院の外交委員長を務めた与党・共和党のロスレイティネン議員は18日、ツイッターに「バノン首席戦略官が解任されてうれしく思う」と書き込みました。
共和党の穏健派の間では強硬な不法移民対策や保護主義的な貿易政策を主張するバノン首席戦略官への不信感が根強くあり、今回の解任を歓迎しているものとみられます。
一方で、アメリカメディアは、保守派の市民運動ティーパーティー」のリーダーの1人が「バノン首席戦略官の解任に落胆している。支持者への裏切りだ」と述べたなどとして保守強硬派の間では失望や反発が広がっていると伝えています。
「トランプ政権の終えんの始まりか」
バノン氏が、去年夏まで会長を務めていた保守系ニュースサイト「ブライトバート」は、バノン氏の解任について「トランプ政権の終えんの始まりとなる可能性がある」と伝えました。
この中で、バノン氏はトランプ氏の選挙公約の実現に向けて最も力を注いできた人物だと紹介したうえでバノン氏が去ったあと、トランプ大統領が選挙公約を守るかどうか保証がないとしています。
そして、俳優から政治家に転身しカリフォルニア州の知事を務めたシュワルツェネッガー氏が当選後、保身のために保守的な支持者を捨てリベラルな政策に走ったと指摘したうえでトランプ氏も第2のシュワルツェネッガー氏になりかねないと痛烈に批判しています。