法科大学院の撤退止まらず 国立、有名私大で募集停止 - 東京新聞(2017年8月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2017081502000173.html
https://megalodon.jp/2017-0816-1324-50/www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2017081502000173.html

法科大学院の撤退が止まらない。地方国立大に続き、首都圏の有名私立大にも波及。二〇一五年度以降に募集を停止した大学院は二十四校に及び、さらに一八年度からは青山学院大や立教大など四校が募集しないと発表した。司法試験合格率の低迷に伴う不人気が主要因だが、そもそもの制度設計に難があったとの指摘もあり、大学院側から「国の施策に振り回された」との恨み節も漏れる。
▽合格率低迷
法科大学院を維持するには多くの教員を必要とし、どうしても財政的に赤字になる」。六月一日に記者会見した青山学院大の三木義一学長は、募集停止の理由をそう説明した。近年は定員割れが続き、一七年度は教員十四人に対し、在籍する学生はわずか二十九人だった。
〇四年度にスタートした法科大学院は司法試験対策偏重を見直し、法学未修者や社会人などを念頭に、多様な経歴を持つ法曹を養成する役割が期待された。最大で七十四校が開設し、定員は計約五千八百人に及んだ。
しかし、当初は七〜八割と見込んでいた司法試験合格率はここ数年、20%台と、法学未修者を中心に低迷。高い費用がかかる法科大学院を経なくても司法試験を受けられる「予備試験」が法曹への最短ルートとして存在感を増していった。
こうした現状に学生の法科大学院離れは加速度的に進み、〇四年度に最多の延べ七万二千八百人だった志願者数は五年後に三万人を下回り、一六年度は一万人を割った。定員割れの法科大学院も続出。一一年度には早くも初の募集停止が私立大であり、一五年度には新潟大や信州大などといった地方国立大にも募集停止が広がっていき、ほぼ半数の三十九校に減った。
▽需要読み誤り
相次ぐ法科大学院の募集停止や廃止の背景には、法曹需要の読み誤りがあったとの指摘もある。
政府は〇二年、法曹人口を大幅に増やす必要があるとして、司法試験合格者数を「一〇年ごろに年間三千人」とする計画を閣議決定した。しかし、法曹需要は伸び悩み、政府は一三年に三千人計画を撤回、一五年に「千五百人以上」に下方修正した。
司法試験合格率の低迷が、法科大学院不人気に拍車を掛け、さらに定員割れや合格率低下を招くという負のスパイラルを打破しようと、文部科学省は下方修正に合わせて定員抑制や統合の模索を始める。
一五年度からは司法試験合格率や定員充足率などに応じて補助金の配分に差をつける制度を開始。最低評価だと補助金の配分率がゼロとなるもので、事実上、撤退を促すものと受け止められた。
こうした状況に「法曹養成制度自体に矛盾がある」とある法科大学院の教授は不満を吐露する。「体系的に法曹を養成するという法科大学院の趣旨は間違っていないが、法曹需要の読み違いや抜け道的な予備試験の実施で、改革の趣旨が曖昧になっている」と訴えた。