(私説・論説室から)標的にされる島 - 東京新聞(2017年8月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017081602000142.html
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米領グアムの周辺に北朝鮮がミサイル発射を警告したというニュースに、この夏に沖縄で出会ったグアムの高校教師、サビーナ・ペレーズさん(49)のことを思い出した。
先住民のチャモロ人である彼女は、米軍駐留地域の女性が集う「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク会議」に仲間と一緒に参加し、グアムの基地被害について訴えた。
実弾演習のために自然豊かなチャモロの聖地が奪われ、森や海の破壊がすさまじいこと。マリアナ諸島のグアムは第二次大戦中には「大宮島」と呼んで日本軍が占領した時期もある。米軍は最新鋭のミサイル迎撃システムを強行配備し、サビーナさんの訴えは大国に翻弄(ほんろう)される島の悲しみを語っていた。
基地に対する女たちの異議申し立ては根本的な問いかけに収れんする。<米軍は本当に私たちを守る存在なのか。米軍の駐留によってむしろ軍事的脅威にさらされるのではないか>。米朝の挑発合戦の中でそのリスクは現実味を帯びようとしている。
沖縄では先週末、辺野古の新基地建設に抗議する県民大会が開かれた。炎天の下、四万五千人もの県民が集まったのはなぜか。沖縄もグアムと同じ、脅威にさらされる側にあり続けてきたからだ。米軍だけでない。中国の脅威を理由にして自衛隊も増強されている。脅威があるなら強めるべきは外交努力だ。標的にされる島の声を共有したい。 (佐藤直子