http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201707/CK2017072802000124.html
http://megalodon.jp/2017-0728-0907-03/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201707/CK2017072802000124.html
稲田朋美防衛相は二十七日、閣僚を辞任する意向を固めた。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡り、防衛省トップとして混乱を招いた責任を取る。特別防衛監察結果の二十八日の公表に合わせて辞任を表明するとともに、安倍晋三首相に辞表を提出するとみられる。防衛相ポストは八月三日にも実施する内閣改造まで首相か閣僚が兼務する方向。黒江哲郎事務次官、岡部俊哉陸上幕僚長の事務方、陸自両トップも辞任する。民進党などは首相の任命責任を追及する。
安倍内閣の閣僚辞任は、二〇一二年十二月の第二次政権発足以降六人目。第三次政権では、今年四月に失言で復興相を辞めた今村雅弘氏に続き四人目となる。
PKO部隊の日報を巡っては「廃棄済み」とした陸上自衛隊にデータが残っていたことが三月に判明。稲田氏は隠蔽体質の改善へ意欲を示していたが、二月に陸自保管の非公表方針を了承していたことが政府関係者の証言で明らかになった。稲田氏は事前了承を否定している。野党は、日報の組織的隠蔽を了承していたとして即時罷免を求めていた。
稲田氏は東京都議選中、自民党候補を応援する集会で自衛隊の政治利用と取られる発言をして非難された。学校法人「森友学園」の訴訟を巡っては、関与を否定した当初の国会答弁を一転させ、謝罪に追い込まれた。
稲田氏は一二年十二月に第二次安倍内閣の行政改革担当相として初入閣。一四年九月に自民党政調会長に抜てきされ、昨年八月に女性で二人目の防衛相に就任した。<解説>
防衛省の日報隠蔽問題で、岡部俊哉陸上幕僚長、黒江哲郎事務次官に加え、稲田朋美防衛相がそろって辞任するのは、安倍政権として幕引きを図るのが狙いだ。ただ、この問題は自衛隊への文民統制(シビリアンコントロール)が機能しているかという問いも突き付けた。稲田氏をかばい続けてきた安倍晋三首相の任命責任は避けられない。
隠蔽問題を巡る特別防衛監察の結果は二十八日に公表される。焦点は、陸上自衛隊が廃棄したと説明した日報のデータを、実際は保管していた事実について、稲田氏が報告を受けていたかどうかだ。陸自と稲田氏の主張は対立しており、監察の事情聴取で溝が埋まった様子はない。
監察の結果に稲田氏の関与が盛り込まれなければ、陸自との主張になぜ、違いが生じたのか国会で追及される。そして、防衛相の指揮下にある防衛監察でなく、第三者の調査を求められる。
もし稲田氏の関与が盛り込まれれば、事実解明を指示した稲田氏が隠蔽の中心人物だったことになる。いずれにせよ、この問題は国会で追及されるため、これ以上の混乱を避けるには、稲田氏の辞任しかないと安倍政権は判断した。
稲田氏の辞任で説明責任がなくなるわけではない。
稲田氏は監察が始まった三月中旬以来、調査中だとして、自身の隠蔽への関与だけでなく、陸自が日報データを隠した経緯や背景などについて口をつぐんできた。
この問題を巡っては、与野党が衆院安全保障委員会の閉会中審査を行うことで合意していた。安倍政権が稲田氏の辞任を理由に委員会開催を拒否し、隠蔽の経緯をきちんと明かさないのであれば、国民の不信はますます深まる。 (新開浩)