前川氏「在職中に目にした文書」「内部告発は難しかった」 - 東京新聞(2017年7月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201707/CK2017071002000217.html
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学校法人「加計学園」問題を巡り、十日行われた衆院文部科学、内閣両委員会の連合審査(国会閉会中審査)の詳報は以下の通り。
 福島伸享氏(民進) なぜ安倍晋三首相は二十カ国・地域(G20)首脳会合後、直ちに帰ってこないのか。疑惑の中心である首相は今日の審査に出席できていない。
 「森友学園」問題で、国有地が八億円値引きされた経緯は分かっていない。二万トンの産業廃棄物を搬出しなければならず、八億円かかるという主張だったのに、大阪府豊中市議が入手した資料によると、実際は二百トン未満しか産廃は出てこなかった。八億円に相当するごみの搬出はなかった。
 富山一成・財務省理財局次長 財務省は確認していない。
 福島氏 財務省の佐川宣寿前理財局長ら、当事者が人事異動でいなくなった。疑惑の隠蔽(いんぺい)のための異動では。
 菅義偉(すが・よしひで)官房長官 適材適所の人材配置だ。
 福島氏 加計学園問題で、文部科学省が追加調査でも存在が確認できなかったとした「萩生田(はぎうだ=光一・官房)副長官のご発言概要」の文書を見たことはあるか。
 前川喜平・前文科省事務次官 在職中に担当課から説明を受けた際に受け取り、目にした文書に間違いない。
 福島氏 「ないと言え」と圧力はかけたか。
 萩生田氏 私からこの文書を伏せてくれとか指示をしたことは全くない。
 福島氏 こうした発言をした記憶は。
 萩生田氏 このような項目について、つまびらかに発言した記憶はない。ただ(文書の日付の二〇一六年)十月七日(文科省の)常盤豊高等教育局長が私の事務所を訪ねて、給付型奨学金などの件でやりとりしたことは確認している。
 福島氏 常盤氏は具体的に聞いているか。
 常盤氏 十月七日に私が萩生田氏を訪ね、獣医学部新設の検討状況についても話したと思う。具体的なやりとりは記憶にない。
 福島氏 前川氏は官邸、首相がどう関わっていると認識していたのか。
 前川氏 (一六年)九月、十月にも和泉洋人首相補佐官を訪ね、この件についてお話を頂戴したことはある。内閣府がこの仕事を進めるに当たっては、背景に官邸の動きがあったと思っている。中でも私が直接指示を受けた和泉氏がさまざまな動きをしていたことは(同年)十月二十一日の文書を見ても明らかだ。
 福島氏 二十一日の文書にある、加計学園の事務局長を(獣医学部新設を担当する)浅野(敦行・文科省専門教育)課長のところに行かせるという会話はあったのか。
 常盤氏 設置認可手続きに関する問い合わせや相談があったことは考えられる。事務局長が相談に来たことは二十一日以前も以後もあったと聞いている。
 福島氏 「一八年四月開学とおしりを切っていた」という表現があるが、誰が言ったのか。
 常盤氏 面談の内容について、個別のやりとりに明確な記憶があるわけではない。事実関係でいうと、私からご説明申し上げたということなので、萩生田氏に何らかの指示を受けたという記憶はない。
 福島氏 肝心なことは「記憶にない」と。そんなに萩生田氏が怖いのか。国家戦略特区は岩盤規制の突破と首相は言うが、新たな参入規制を作っている。
 山本幸三地方創生担当相
 国家戦略特区は、国が勝手に決めるわけではない。まず地域を限定したところでやるしかない。
 福島氏 速やかに臨時国会を開催し、予算委員会の集中審議を行い、首相自らが説明することを求める。
 菅氏 与党とも相談して決めたい。
 緒方林太郎氏(民進) 首相は(国家戦略特区について)「自分が関与する余地はない」と言ってきたが突然「全国展開する」と言った。矛盾している。
 山本氏 首相が言っているのは、原則論としての国家戦略特区の全国展開。個別の問題についてはできないと言っているわけで、全く問題ない。
 緒方氏 首相は意欲のあるところにはどんどん獣医学部の新設を認めると発言した。新しい需要があると認定するデータは。
 山本氏 何人いるかは、はっきりしない。定員を超過しており、それだけでも足りないということだ。実際に不足している地域偏在はある。獣医師を増やすのは必要。
 緒方氏 学校は需要・供給でどんどん造るものか。
 前川氏 大学の設置認可は、平成十五(〇三)年を境に、基準に合致したら設置認可は認める方針に転換したが、特定の分野は量的規制を維持するとされた。その一つが獣医学部。学費と私学助成で膨大な負担が生じる分野については、一定のコントロールが必要だ。
 松野博一文科相 獣医学部は、六年間の教育期間、専門性、投入される社会資本等を考えると、抑制に関しては大学の定員でやるのも合理性がある。
 緒方氏 需要が明らかでないのに、なぜ強引に押し切ったのか。
 山本氏 需給の量や数をはっきり示すなんて無理。市場メカニズムで決まっていくしかない。
 緒方氏 ダブルスタンダード二重基準)だ。
 前川氏 問題は規制改革にどんな条件を付し、結果として何が起きたか。穴のあけ方が問題だった。
 宮本岳志氏(共産) 前川氏は、獣医学部新設を巡って行政がゆがめられたと言ったが、どういうことか。
 前川氏 規制緩和の恩恵を受ける決定プロセスに非常に不公平、不透明な部分がある。広域的に獣医学部の存在しない地域、平成三十(一八)年度に開設、さらに一校に限るという条件が次々に付され、初めから加計学園に決まるようなプロセスを進めてきたように見える。背後には官邸の動きがあった。
 宮本氏 文書によると、昨年十月二十一日、萩生田氏は常盤氏に「総理は平成三十年四月とおしりを切っていた」と発言した。
 前川氏 私は現職中に見ていないが、見る限り、文科省の責任ある職員が書き留めたもので、信ぴょう性があると思う。
 宮本氏 首相や菅氏から指示は。
 萩生田氏 文書で問題になっている部分に、私が明確に発言したワード(言葉)はない。中身を問われても分からないし、首相から指示も受けていない。
 平井卓也氏(自民) (前川氏が)事務次官を辞めてからいろいろ言うのは違和感がある。
 前川氏 在職中に内部告発をするのは難しかった。国民が知らなければ行政のゆがみを是正することもできないから、発言するようになった。
 平井氏 いろんな文書は前川氏が流出元では。
 前川氏 文書の提供者が誰かは差し控える。
 平井氏 〇二年の中教審答申で、大学設置の審査は本来質を評価すべきで、告示による需給調整は問題としていた。ほったらかしていた理由は。
 前川氏 農水省から、獣医師養成の拡大が必要という意思表示がなかったことが大きな理由だ。
 平井氏 規制を維持すれば需給をコントロールできるのか。
 前川氏 獣医学部の学生は全国から入学し、卒業後は全国に散らばっている。この地域に獣医師が不足しているからその地域に大学を造るという、単純な考え方ではできない。
 平井氏 天下り先などの確保のために新設を抑制していたのではないか。
 前川氏 量的規制は、人材養成に一定の投資が必要といった配慮からだ。天下りとは全く無関係だ。
 平井氏 萩生田氏が中心人物のように扱われているが、本当のところは。
 萩生田氏 文科省の相談にはかなりの時間を割いて真摯(しんし)な対応をしてきたつもりだが、私自身が能動的に関わりを持った事実はない。
 吉田宣弘氏(公明) 獣医学部新設を認めた経緯は。
 原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員 文科省の告示は、獣医学部は一切認可しないとしていた。あまたの岩盤規制の中でもかなり異様。文科省とも議論を重ね、政策決定された。
 吉田氏 獣医学部新設は、行政がゆがめられたのか。
 原氏 (加計)学園の理事長と首相が友人とは全く知らなかった。特区諮問会議の民間議員五人も同様。プロセスに一点の曇りもない。
 吉田氏 前川氏は「行政がゆがめられた」となぜ在職時に言わなかったか。
 前川氏 「無理が通れば、道理が引っ込む」という感覚を文科省の職員は持っていた。次々と条件を付すことで加計学園しか残らない形にもっていった。そこがブラックボックスだ。