籠池夫妻初公判 法廷で真相を解明せよ - 東京新聞(2019年3月7日)

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詐欺罪などに問われた学校法人「森友学園」の前理事長籠池泰典被告と妻諄子被告の初公判が大阪地裁で開かれた。起訴内容は疑惑の一部分。被告人質問などを通して全体像の解明に期待する。
起訴状によると、両被告は小学校の建設費を水増しし、国の補助金五千六百四十四万円を詐取。学園などが運営する幼稚園の教員数などを偽り、大阪府大阪市補助金一億二千万円を詐取したなどとしている。夫妻は起訴内容の大半で無罪を主張。検察側とほぼ全面的に争う姿勢を見せた。
起訴内容は、森友疑惑の核心そのものとは言えない。核心は、「小学校を建てるための国有地が、八億円も値引きされたのはなぜか」ということ。
付随して、政権・官僚側に疑惑が浮上。「小学校に首相の名前を冠し、首相夫人が名誉校長をしていた時期がある」「財務省の公文書十四通が、首相夫人に関する記述を削除するなど改ざんされた後に国会へ提出された」「国の側から学園側に買い取り可能な金額を尋ねた」などの不可解な指摘が積み重なった。
「官僚に、首相らへの忖度(そんたく)が働いたのでは」と野党などから批判されたが、国会での真相究明は不発だった。公文書の改ざんは財務省が認めて公表。虚偽公文書作成容疑などで同省の佐川宣寿・元理財局長ら三十八人が告発されたが、大阪地検は不起訴にした。現在、不服申し立てを受けた検察審査会が審査している。
夫妻の裁判では今後、国の職員ら十九人が証人尋問を受ける予定。起訴内容に関わる問いが主になろうが、いびつな官僚体制を正すために、忖度なく真実を証言してもらいたい。
籠池夫妻は二〇一七年七月に逮捕された後、十カ月も勾留された。百八日間の勾留の後、六日出所したゴーン被告を大幅に上回る「人質司法」ぶり。この日の法廷で、泰典被告は「国策捜査国策逮捕を絶対許さない」「小学校は首相と夫人の応援でつくりあげたのに値引き問題が発覚すると首相は保身に舵(かじ)を切った」などと主張。裁判前には「くすぶりに火が付いてどかーんとなるのが今回の裁判だ」と話していた。
森友疑惑をめぐっては、国有地売却を担当した国の職員が「書き換えをさせられた」とメモを残して自殺した。国民は、疑惑に対する明快な答えを得ていない。起訴内容とずれるが、この裁判を通じて少しでも解明されるよう望む。