「教師の多忙」ズバリ問う さいたまの元教頭が本出版:埼玉 - 東京新聞(2017年6月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201706/CK2017062002000190.html
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小学校で三割、中学校で六割の教員が、月八十時間以上の残業をする「過労死ライン」を超えていると指摘される中、ずばり「教師の多忙」の実態を問い、解決策を提言する本が出版された。長年、県内の教育現場に向き合ってきた筆者は「忙しさの中で、子どものための本当の仕事が後回しになっている」と危ぶむ。  (田口透)
出版されたのは、篠原孝一さん(75)=さいたま市浦和区=の「『教師の多忙』とは何か」(一莖書房)。篠原さんは群馬大卒業後、戸田市内の小学校で三十九年間、教員、教頭として現場に立ってきた。
「以前から教員の多忙は言われていたが、むしろ現状は悪くなっている。業を煮やして本にしました」
文部科学省の調査などでようやく教員の「働き過ぎ」の問題が注目を集めているが、「当の先生たちは忙し過ぎて、自分たちの実態を認識する暇すらない」と指摘する。
本では自らの体験や同僚の証言を基に、教員の仕事の実態を具体的に列挙。いかに時間に追われているかをわかりやすく解説した。
現役時代、近くの学校では同年代の女性教員らが脳梗塞で亡くなったり、教員を辞めた。「すべて多忙のせいにはできないが、誰がそういう状況になっても不思議ではないと感じていた」と、当時から人ごとではなかった。
解決策として、現場の多忙さを緊急かつ重大な問題として認識すべき−としたうえで、まず「これ以上新しい仕事は増やさない」と提言する。
本では、福祉教育、環境教育、エイズ教育、純潔教育、食育など、いわゆる「○○教育」の事例を列挙。「(文科省などが)丸投げするのは簡単だが、満員電車にもっと人を詰め込むようなもの。仕事を増やすなら、今の仕事を減らすべきだ」と苦言を呈した。
教員にとって一番大事なのは、授業など「子どもに向き合った本当の仕事」。しかし、多忙さの中で、授業の準備などが一番後回しにされてしまうという。
三十九年間の教員生活の中で、篠原さんは「子どもは真剣に向き合えば必ず応答する存在」と話し、「そういう瞬間があったからこそ、忙しい中でも続けてこられた」と振り返る。だからこそ、子どもへの対応が後回しになってしまう「教師の多忙」に、これからも警鐘を鳴らしたいと話した。

「教師の多忙」とは何か

「教師の多忙」とは何か