「共謀罪」で自公維が合意 欠陥の修正にはほど遠い - 毎日新聞(2017年5月13日)

https://mainichi.jp/articles/20170513/ddm/005/070/070000c
http://archive.is/2017.05.13-070133/http://mainichi.jp/articles/20170513/ddm/005/070/070000c

後半国会の焦点である「共謀罪」法案をめぐって、自民、公明両党と日本維新の会が修正で合意した。
修正案では、「捜査を行うに当たってはその適正の確保に十分配慮しなければならない」と本則に盛り込むという。だが、こうした訓示規定が行き過ぎた捜査の歯止めになるのか。実効性は疑わしい。
また、維新が求めた対象事件の取り調べ可視化(録音・録画)は、付則で検討課題と盛り込むにとどまった。抜本的な見直しにはほど遠い。
政府は、法案提出の目的を、国際組織犯罪防止条約を締結するためだという。だが、条約の締結に当たって、幅広い共謀罪の法整備が必要なのか。政府・与党と野党の主張は今も平行線のままだ。
一方で政府は法案提出に当たり、テロ対策を前面に打ち出している。
確かに多くの国民がテロ対策の必要性を感じている。ただし、「共謀罪」法案は、計画、準備段階の犯罪の処罰を可能とするものだ。捜査が市民生活への監視にまで及ぶことへの国民の懸念は根強い。
仮に「共謀罪」法案が必要ならば、まずは対象犯罪を徹底的に絞り込むことが最低限求められる。
そもそも、共謀罪新設に当たり、条約が求める600以上の対象犯罪は減らせないと政府は長年説明してきた。だが277に半減させた。
適用対象を組織的犯罪集団に限定などすれば対象犯罪を減らせる。条約もそれを容認しているというのが、新たに持ち出してきた論法だ。あまりにご都合主義的だ。結局、条約が各国の裁量を広く認め、解釈の余地があるのだろう。
対象犯罪の絞り込みは難しくないはずだ。国会審議でも、法学者が性犯罪など必要性の薄い犯罪が多数含まれていると指摘した。
もう一つ、捜査権の乱用の歯止め策について、与野党で徹底的に議論を深めることを求めたい。
組織的犯罪集団に適用対象を限定し、犯罪の準備行為も要件に加えたとはいえ、定義にあいまいさは依然残る。捜査機関に市民監視の武器を与えてしまうのではないか。その不安は当然だ。法案の条文で具体的な対策を書き込むしかない。
与党は来週にも採決する構えだ。数の力で押し切ってはならない。