安保法は「違憲」 県民ら175人が地裁に提訴:群馬 - 東京新聞(2017年3月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201703/CK2017033002000185.html
http://megalodon.jp/2017-0331-0914-24/www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201703/CK2017033002000185.html

安全保障関連法は違憲で平和的生存権などの侵害により精神的苦痛を受けたとして、県内などに住む百七十五人は二十九日、国に一人当たり十万円の損害賠償を求める集団訴訟前橋地裁に起こした。全国で同種の集団訴訟が相次いでおり、群馬でも戦争体験者らが立ち上がった。 (川田篤志
訴状では、集団的自衛権の行使を認めた安保法は武力行使や交戦権を認めていない憲法九条に反していると主張。テロや戦争に巻き込まれる危険が増すことで恐怖や不安の中での生活を余儀なくされ、平和的生存権や人格権を侵害したなどとしている。
原告は三十〜九十代で、県内に住む百七十一人と県外の四人。太平洋戦争中に米軍の爆撃を受けた前橋や伊勢崎、太田での空襲体験者も加わった。
主張には、安保法に基づく「駆け付け警護」の新任務が付与された自衛隊南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣は、憲法一八条が禁じる「意に反する苦役」に当たるなど自衛隊員の権利侵害を盛り込んだ。
原告団に派遣部隊の自衛官はいないが、弁護団の下山順事務局長は「第三者憲法上の権利が援用されるべき事案。この主張は全国の同種訴訟でも珍しいのでは」と説明。抗議の意味を込めて同法施行からちょうど一年となったこの日に提訴したといい、「違憲であることをしっかり判断してほしい」と訴えた。
一方、内閣官房国家安全保障局の担当者は取材に「憲法に合致しており、国民の命と暮らしを守るために必要なもの。訴状を見た上で今後の対応を検討する」とコメントした。
弁護団などによると、この日提訴された前橋と宮崎両地裁も加え、同種の集団訴訟は東京や埼玉など全国の十七地裁に及ぶ。原告は計五千八百六十五人。

◆戦争不安つのる「ただ恐怖」 原告の空襲体験者ら会見
提訴に至った思いを語る岩崎さん(左)ら原告と弁護士=前橋市
原告団に加わった空襲や戦争体験者らは提訴後、前橋市内で会見した。
自らの悲惨な体験を基に、戦争に巻き込まれる不安から受ける精神的苦痛の大きさを主張。安保関連法の成立・施行に踏み切った政府・与党を批判した。
「ただ恐怖だった」。一九四五(昭和二十)年八月五日の前橋空襲を十一歳の時に体験した岩崎正一さん(83)=同市二之宮町=は、米軍機による爆撃の中を逃げ回った。「私のすぐ後ろの人は被弾して足の骨が見えた。その時の衝撃は忘れられない」と振り返る。
提訴した理由を「安保法でまたいつ戦争に巻き込まれるか不安になった。戦争につながるようなことは絶対にやめてほしい」と語り、表情を引き締めた。
満州(現在の中国東北部)などで兵役に就いた金古薫さん(99)=同市荒牧町=は、戦争の悲惨さなどを多くの人に理解してほしいとの願いから、「この年齢だが裁判に加わった。安倍内閣は危険で許せない」と力を込めた。 
  (川田篤志