森友小の認可申請取り下げ 財務省、旧国有地返還要求へ - 東京新聞(2017年3月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031102000128.html
http://megalodon.jp/2017-0311-1018-01/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031102000128.html

◆理事長は退任表明
大阪市の学校法人「森友(もりとも)学園」は十日、大阪府豊中市の旧国有地に小学校を設置するための認可申請を取り下げた。籠池泰典(かごいけやすのり)理事長は大阪市内で記者会見し、退任の意向を表明。「学校が建設できなかった責めを負う。子どもと保護者に申し訳ない」と謝罪した。虚偽の契約書作成など一連の疑惑に質問が集中したが明確な回答はなく、国会の参考人招致には応じない考えを示した。財務省は旧国有地の返還を求めることを明らかにした。
学園は二〇一五年一月、府私立学校審議会(私学審)の「認可適当」との答申を受け、今年四月の小学校開設準備を進めていた。「安倍晋三記念小学校」の触れ込みで寄付金を募り、安倍首相の妻の昭恵氏が名誉校長に就いていた。
だが国が国有地を評価額の14%で学園に学校用地として売却したことが発覚し、認可申請に絡む複数の虚偽報告の疑いも浮上。不認可となる見込みだった。
籠池氏は会見で、認可申請取り下げを新年度が迫る中での「苦渋の決断だった」とし、用地取得についての国会議員らの口利きを否定。「安倍首相夫妻からも何もしてもらっていない」と述べた。昭恵氏の講演で謝礼の支払いはなく、講演自体は「精神的な財産」と語った。首相と面会したことはないとした。
今後の活動について「再びチャレンジする。今まで以上に子どもの育成をする」と話し、別の場所での学校建設を目指す意向を示した。
一方、財務省は旧国有地に建設した校舎を解体し、更地に戻して引き渡すよう学園に要求する。違約金の支払いも求める。国土交通省は既に支払った補助金約五千六百万円を返還請求する方向だ。
入学予定だった児童について、府教育庁は各市町村に地元の公立小で受け入れるよう配慮を要請する。
学園は金額が異なる三通りの工事請負契約書を大阪府などに提出。施工業者の藤原工業が十日、工事請負代金を七億五千六百万円とした契約書は、学園側の虚偽説明に基づき作成したと明らかにした。
籠池氏は会見で偽造の認識はないと反論。府教育庁は引き続き学園側に説明を求めていく。
◆「袋だたき」恨み節連発 会見で籠池氏、疑惑説明せず
疑惑には答えず、国会の追及や報道によって小学校開設の夢が絶たれたと恨み節をくり返した。一連の問題発覚後、初めて開いた記者会見で、籠池理事長は約二十分にわたり教育理念や報道批判をまくし立てる一方、異なる金額が記された三通りの契約書に質問が及ぶと説明はしどろもどろに。追及をかわし、会見は独演に終始した。
午後五時半すぎ、学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)。大きな日の丸が壁に掲げられた遊戯室は、百人ほどの報道陣で、すし詰めとなった。
籠池氏は濃紺のスーツ姿で現れ、襟には保守系団体「日本会議」のメンバーを示すバッジが光る。目は充血したように見え、国旗に一礼してから、語り始めた。
冒頭、国会での追及や報道の過熱で土砂の搬出などが遅れたと指摘。寄付金も集まりにくくなり、「いつの頃からか私の信条が(問題の)中心となり、袋だたきに遭うようになった」と訴えた。
報道機関を名指しで批判。国有地払い下げを巡る訴訟を「何かに邪魔されている感じ」、この一カ月間を「さあ、これからという時に爆弾がさく裂した」と表現した。
認可申請の取り下げは、十日午前のPTAの会合で保護者の話を聞いて決意したといい、「どこかで終止符を打たないと、子どもたちの行く末が気になる」と説明。「涙が出るような気持ちだった。日本を良くしようとする教育機関をなぜ見守ってくれなかったのか」と嘆いた。
工事請負契約書について問われると、「契約書を見ていない」「誰かの間違いだ」と、途端に歯切れが悪くなった。記者が質問を畳み掛けると、同席した長男佳茂(よししげ)氏が「誘導尋問だ」と遮り、話題をそらした。
当初は保護者や児童への謝罪の言葉はなく、記者の指摘を受け、初めて「本当に申し訳なかった」と口にした。