少年法 立ち直りこそ第一に - 東京新聞(2017年2月20日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017022002000127.html
http://megalodon.jp/2017-0220-0903-19/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017022002000127.html

少年法の適用年齢を十八歳未満に引き下げる諮問が法制審議会に出された。現行制度は刑罰よりも保護が適切だと判断された経緯がある。立ち直りを第一に考えて、安易に引き下げるべきではない。
少年事件はすべて家庭裁判所が事件の調査をする。少年鑑別所で約四週間、心理学や教育学、社会学などの科学的見地から鑑別調査が行われる。
同時に家庭裁判所でも調査官が非行少年や両親らに面接したり、学校や勤務先で聞き取り調査などが行われる。人間行動科学に基づくデータを踏まえ、非行の原因を探り、背景を解明し、その少年にとって最善の処遇方法を決める。
もともと少年は成長過程にあり、犯罪も資質と生まれ育った環境に大きく起因していると考えられているからである。立ち直りを第一に考えて、制度設計がなされているともいえる。
日弁連によれば、現行制度ができた一九四八年には国会でもそのような考え方が広く支持された。「この年齢の者はいまだ心身の発達が十分でなく、環境その他外部的条件の影響を受けやすい」「彼らの犯罪が深い悪性に根ざしたものではなく、刑罰を科するよりは、むしろ保護処分によってその教化を図る方が適切である」などの答弁がある。
刑務所に入れるよりも、教育の力が再犯の防止に有効だと考えられたのだ。犯罪や非行に走る少年には自己肯定感が低いというデータもある。「自分など生きていても仕方がない」などと考えてしまう。だから、再犯防止に必要なのは、まず少年の深い心の傷を受けとめることである。
教育の力によって、少年は被害者の痛みや心情に向き合うことができる。謝罪の気持ちもそうして生まれる。このことは米国で論証されている。司法省の一機関が発表した論文では、六つの研究において、「刑事裁判所に送致された少年は、少年裁判所に送致された場合より、より高い再犯リスクを有する」という結論を導き出しているという。
確かに選挙権年齢は既に十八歳に引き下げられた。民法成人年齢も同様に引き下げる法案が準備されている。だからといって、少年法も連動させていいのか。仮に引き下げれば家庭裁判所が取り扱ってきた少年被疑者の約40%は少年司法手続きからは除外される。法の目的に照らし、少年法は考えるべきである。