実社会で使う内容多く=主権者教育や災害充実−学習指導要領改定案・教科別ポイント - 時事ドットコム(2017年2月14日)

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017021400939&g=soc
http://archive.is/2017.02.14-104438/http://www.jiji.com/jc/article?k=2017021400939&g=soc

学習指導要領改定案は、これからの時代に求められる教育を実現するため、学校が社会と連携する「社会に開かれた教育課程」を掲げた。各教科でも、実社会で役立つ知識や現代的な課題に対応できる力を育む内容が多く盛り込まれた。

都道府県の漢字、小4までに=国語
都道府県名に使う全漢字を小学4年までに学習する。小4の社会で都道府県の名称と位置を学習するのに関連付ける。小学校で学ぶ漢字として定められていない新潟の「潟」など20字を小4に追加。現在は小5で学ぶ富山の「富」など4字、小6で学ぶ宮城や茨城の「城」も小4に前倒しする。小学校6年間で学ぶ漢字数は現行より20字増の1026字になる。

◇小中も主権者教育=社会
選挙権年齢が高校生を含む「18歳以上」に引き下げられたのを受け、小中学校の主権者教育も充実。小3では新たに市町村の仕事や税金の役割などを学ぶ。歴史的分野では、学術研究の進展に対応したとして従来の表記を変更し、小6で学ぶ江戸幕府の「鎖国」は「対外政策」、「日華事変」が「日中戦争」となった。「聖徳太子」も没後1世紀ごろから使われた呼称と考えられるため、小6では「聖徳太子厩戸王)」、中学は「厩戸王聖徳太子)」とされた。

◇統計教育を充実=算数・数学
小中学校の算数・数学全体を通じて統計教育を充実させる。中央教育審議会で、学校で教える算数・数学の内容と実社会のつながりが弱いといった議論があったことなどに対応した。現行は中1で扱う「代表値」を小6に移行。点で分布の様子を視覚的に捉えられるグラフ「ドットプロット」も追加する。また、高校で教えている「四分位範囲」「箱ひげ図」を中2に前倒しする。

◇小4以上で自然災害=理科
東日本大震災などを受け、自然災害についての内容を充実させる。小学校では現行の5、6年に加え、4年でも学ぶ。中学でも現行は3年だけだが、全学年で扱う。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、放射線に関しても現行の中学3年に加えて2年でも学ぶようになる。

◇和食でだし=家庭、技術・家庭など
前回改定に続き、日本の伝統や文化に関する教育を強化する。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された和食について、小学校の家庭と中学の技術・家庭で学ぶ調理を充実。基本となる「だし」を取り上げるよう初めて記載した。中学の家庭分野では和服について触れることも求めている。小学校の音楽では、中学年で選択できる旋律楽器の例示に和楽器を加えたほか、日本や郷土の音楽に関する指導の工夫も求めた。

東京五輪へ指導=体育・保体
2020年東京五輪パラリンピックを契機とした指導を追加する。小学校の体育ではフェアプレーの大切さなどスポーツの意義や価値などに触れるよう明記。中学の保健体育では、現行の五輪に加えてパラリンピックについても、果たしている役割を学ぶ。小中学校とも陸上競技でリレーのバトン受け渡しを加えた。

◇中学は授業を英語で=外国語
小学5、6年で実施している英語の「聞く」「話す」を中心に慣れ親しむ「外国語活動」を小3、4に前倒し。小5、6の英語は「読む」「書く」を加えて正式教科にする。中学の英語の授業は英語で行うことを基本とする。扱う単語数は小3〜6で600〜700語程度、中学3年間では現行の1200語程度から1600〜1800語程度に増やす。

◇プログラミング必修化=総合・算・理
小学校ではプログラミング教育が必修化されるが、新たに教科などは設けない。総合的な学習の時間、算数の5年で学ぶ「正多角形の作図」、理科の6年で学ぶ「電気の性質や働きを利用した道具」などで必ず1回はプログラミングを体験し、論理的思考力を身に付ける学習活動をするよう求めた。中学では技術・家庭の技術分野でプログラミングを扱う。

◇育ってほしい姿を明確化=幼稚園
幼稚園教育要領改定案では「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を明確化した。示したのは、健康な心と体▽自立心▽協同性▽道徳性・規範意識の芽生え▽社会生活との関わり▽思考力の芽生え▽自然との関わり・生命尊重▽数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚▽言葉による伝え合い▽豊かな感性と表現−の10項目。「評価」の実施も初めて明記。他の幼児との比較や達成度ではなく、一人一人の良さや可能性などを把握するとし、小学校への引き継ぎも求めている。