(政界地獄耳)機能する「三権分立」 - 日刊スポーツ(2017年1月31日)

http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1772384.html
http://archive.is/2017.01.31-052237/http://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/1772384.html

★米トランプ大統領が就任以来25日までの6日間で大統領令12本に署名を乱発しているが、米国は三権分立が確立された民主国家。大統領令は万能ではない。トランプ大統領は25日に放送された米ABCテレビで、選挙中から復活を望んでいたテロの容疑者らの尋問には「水責め」が「絶対に有効」と言い出した。米国では拷問にあたるとして禁止されている。ただマティス国防長官やポンペオCIA長官ら現場の判断に「委ねる」としていた。
★「水責め」復活はあっけなく、ついえる。国防長官就任前の11日の上院指名公聴会マティスは「国内法、国際法ジュネーブ条約を順守する」と証言しており、ほとんど「言ってみただけ」のものもあるということだ。また、イスラム過激派の入国防止のため、入国審査の厳格化を目的に難民や中東・アフリカの一部諸国からの入国を一時停止する大統領令が出され、国内外の空港などで拘束・搭乗拒否された人が29日までの3日間に約280人に達したが、ニューヨークの連邦地裁判事は有効なビザを持つ人の送還は認めないとし、大統領令の効力を部分的に停止する判断を示して、三権分立が機能していることを内外に示したといえる。
★「選挙中の公約は実行する」と発言する大統領だが、これもビジネスマンのやり方かもしれない。まず吹っかけてなびくならそれでよし、首尾良くいかなければ深追いしない。ただ入り口が過激なだけに、また常識人には理解しがたい思考で攻めてくるため攻めあぐねるが、手法を学べば対策はありそうだ。それよりも問題は国務省では生え抜きキャリアであるケネディ国務次官(総務担当)、バー次官補(行政担当)、ボンド次官補(領事業務担当)、スミス外交使節室長が辞表を提出した。訪米目前の首相・安倍晋三らにもう今までの外交習慣も慣例も通用しない。(K)※敬称略