豊洲市場 移転判断先送りへ 有害物質、再調査方針 - 毎日新聞(2017年1月14日)

http://mainichi.jp/articles/20170115/k00/00m/040/063000c
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東京都の築地市場中央区)の移転先となる豊洲市場江東区)で都が実施した最終9回目の地下水モニタリングで、201カ所の調査地点のうち計72カ所で有害物質が国の環境基準値を上回ったことが14日、分かった。最大で基準値の79倍のベンゼンと3.8倍のヒ素、不検出であるべきシアンも検出された。外部有識者の「専門家会議」は数値を「暫定値」とし、再調査の方針を示した。小池百合子知事が「今夏までに」としていた移転の可否判断時期の先送りは不可避となった。
都は2014年以降、豊洲市場に作った観測井戸で地下水モニタリングを実施。8回目の調査で初めて、基準値の1.1〜1.4倍のベンゼンと1.9倍のヒ素が、青果棟のある5街区の計3カ所で検出された。最終調査では検出箇所と数値のいずれもが、8回目を大幅に上回った。
今回の結果を受け、同会議座長の平田健正・放送大和歌山学習センター所長は「このような急激な数値の上昇はあまり例がない。近く再調査を実施して、3月中にも結果を公表したい」と述べた。同会議の委員からは「1回の調査では判断できない」との指摘も上がっており、再調査は複数回になる見通し。
一方、小池知事は同日午後、都内で報道陣の取材に応じ「想定を超える数値に驚いている。原因を専門家会議と都の市場問題プロジェクトチーム(PT)でダブルチェックしてもらう」と述べた。移転の可否判断の時期は「その結果次第」とした。再調査の実施時期は3月中としたが、その後のスケジュールは白紙となった。
小池知事が昨年11月に公表した工程表では、今年4〜5月に専門家会議と市場問題PTが豊洲市場の安全性を最終確認し、同6〜7月に環境影響評価(環境アセスメント)の審議を実施する予定だった。アセスの変更が一部にとどまれば、小池知事が今夏にも移転の可否判断を下し、最速で今年末〜18年春に移転の環境が整うとしていた。【川畑さおり、円谷美晶】

【ことば】ベンゼン
常温では無色透明の液体で、引火性の高い化学物質。発がん性があり、目や喉など粘膜への刺激や皮膚の炎症を引き起こす。高濃度の場合には目まいや頭痛、嘔吐(おうと)などの症状が出る。

【ことば】シアン化合物
「シアン化物イオン」を含む化学物質の総称。毒劇物に指定されている青酸カリなども含まれる。金属メッキや分析試薬に使われている。少量でも体内に取り込むと目まいや頭痛、吐き気など全身に中毒症状が表れ、一定量を超えると短時間で死に至る。豊洲市場の予定地は東京ガスの工場跡地で、石炭から都市ガスを製造する過程で、ベンゼンやシアン化合物、ヒ素などの有害物質が土壌に浸透したとされる。