天皇退位認められぬのは「内閣の奴隷」 故・三笠宮さま - 朝日新聞(2016年12月17日)

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天皇の退位が認められないのは「内閣の奴隷」――。故・三笠宮さまが戦後間もない頃につづった意見書が、天皇陛下の退位をめぐる議論が続くなか、注目を集めている。将来の天皇は「今迄(まで)以上に能力と健康とを必要とする」と記すなど、現在の状況を予見した内容となっている。
意見書は「新憲法皇室典範改正法案要綱(案)」。終戦翌年の1946年11月、皇室典範改正を審議していた枢密院に提出された。本文は22ページ。原本を枢密院の書記官が写したものが大阪府公文書館に所蔵されている。
皇位継承」の章では「『死』以外に譲位の道を開かないことは新憲法第十八条の『何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない』といふ精神に反しはしないか?」と疑問を投げかけた。
また、天皇が象徴で無答責(責任を持たなくてよい)だからといって、どんな人物でもよいのであれば「日の丸の旗の方が余程ましである」と言及。従来の天皇の姿を「国民の前に全くヴェールをかけて現人神として九重の奥深く鎮まり給ふ」と記した。
そのうえで、将来に予想される天皇像は「性格、能力、健康、趣味、嗜好(しこう)、習癖ありとあらゆるものを国民の前にさらけ出して批判の対象にならねばならぬ」と指摘。「今迄以上に能力と健康とを必要とするわけである」とした。
手続きについては、天皇皇室会議に譲位を発議できるようにすることを提案。この自由を認めないならば「天皇は全く鉄鎖(てっさ)につながれた内閣の奴隷と化する」と厳しく批判した。
2003年にこの意見書を発掘した森暢平・成城大准教授(日本近現代史)は「三笠宮天皇も人間であることを皇族の立場から訴えていた。ある意味、先見の明はあったが、ただ実現するには様々な問題が起こりえたわけで、それらに対処してこなかったツケが現在の問題として浮上している」と話している。(島康彦、多田晃子)