江東・扇橋の「ごみ屋敷」 若手26人が現代美術展:東京 - 東京新聞(2016年12月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201612/CK2016121502000162.html
http://megalodon.jp/2016-1215-1040-12/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201612/CK2016121502000162.html

江東区扇橋の住宅街で、取り壊される前の民家を会場にした現代美術の企画展「BARRACKOUT(バラックアウト)」が開かれている。関東大震災東京大空襲で多くの命が奪われた土地の記憶と、ごみとして堆積していた種々雑多な物たちを、若手作家二十六人が独自の作品に仕立て上げた。 (井上圭子)
会場の「旧松田邸」は、築約六十年の木造二階建て民家。アーティスト相沢僚一さん(24)=港区=の曽祖父で、江東区議会議長を務めた故・松田勝盛さんが戦後、中国東北部(旧満州)から引き揚げ、現在の同区扇橋二に家を構えた。何度かの改築と家主の交代を経て「ごみ屋敷」となっていたが、取り壊しが決まったため、相沢さんが「この場所でしかできない作品展をやろう」と呼びかけた。
作家仲間と一緒に九月から毎週末集まり、三カ月で二トントラック二、三台分のごみを捨て、企画展の開催にこぎ着けたという。
大工仕事もこなす秋山佑太さん(34)=杉並区=は「建物の息づかいが伝わる展示を」と、ごみの山から掘り出した建具や家具、電化製品を使って外階段を作った。鑑賞の順路でもある。
祖父から東京大空襲の体験談を聞いて育った弓指寛治(ゆみさしかんじ)さん(30)=練馬区=は、大勢の人をのみ込む炎と、火柱に巻き上げられるごみ、死者の魂を運ぶ鳥を大きな壁画に表現した。
このほか、東京大空襲の時に近くの猿江恩賜公園に仮埋葬されたと伝えられる遺体数と同じ、一万三千二百四十二の魚形のピースを床に敷き詰めた作品も。
最初の家主、松田さんについての研究を作品化して出展している荒木佑介さん(36)=さいたま市=は「焦土に立つバラックに入った気持ちで、歴史や縁の不思議を感じて」と話す。
二十五日まで金・土・日曜の正午〜午後八時開廊。旧松田邸は、江東区扇橋二の三の二。入場料五百円。会場内は段差や狭く暗い所もあるので、歩きやすい靴と服装で。詳細はスマホサイト(「BARRACKOUT」で検索)で。問い合わせは、連絡担当の中村孝士さん=電090(6148)8231=へ。