マンション訴訟で元国立市長の敗訴確定 理念の行動、個人に賠償責任 - 東京新聞(2016年12月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016121590140307.html
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東京都国立市のマンション建設を巡り、市が過去の訴訟で不動産業者に支払った賠償金と同額の支払いを上原公子(ひろこ)元市長に求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(木内道祥裁判長)は、上原氏側の上告を退ける決定をした。決定は十三日付。市の請求通りに上原氏に約三千百万円の支払いを命じた、二審の東京高裁判決が確定した。
上原氏は市長当時、市内のマンションの高さ規制の条例制定を主導。市は二〇〇〇年に、高さを二十メートル以下とする条例を施行した。これに対し、高さ四十四メートルのマンションを着工した業者が「営業妨害だ」と市を訴え、敗訴が確定した市は遅延損害金を含め約三千百万円を支払った。
その後、一部の住民が上原氏の責任を問い、市に対し上原氏に賠償を求めるよう住民訴訟を提訴。住民勝訴の判決が確定し、市は地方自治法に基づいて、上原氏に支払いを求める裁判を起こした。
この訴訟で、一四年九月の東京地裁判決は、上原氏は業者の営業を妨害したのではなく、景観保護という政治理念に基づき行動しており違法性は高くないと判断。業者が賠償額と同額を市に寄付して実質的な損害がないことや、市議会が上原氏への請求の放棄を議決したことなどから、「市が元市長個人に請求するのは信義則に反する」と市側の請求を退けた。
しかし一五年十二月の高裁判決は、上原氏がマンション建設を阻止するため「市の内部情報を提供して住民運動を起こさせたり、マンションが建築基準法に違反するかのような議会答弁をした」と認定。「景観保護のため公益性があったとしても、正当化できない」とし、上原氏に対し、市が業者に支払った約三千百万円全額の支払いを命じた。
この間、市議会では二審が始まった後の選挙で会派構成が変わり、一転して上原氏への請求権行使を求める議決をした。高裁判決は「市は最新の市議会の議決に従うべきだ」とも判断した。国立市は十五日、判決確定を受け「今後とも法令を順守し適正な事務執行に努めていく」とのコメントを出した。

◆行政萎縮させる決定
<上原公子元国立市長のコメント> 高裁の判決は私を敗訴させる結論があり、その理由を後付けした印象だった。最高裁がお墨付きを与えたことで、「余計なことをすると上原みたいになる」と思われたら、首長のみならず行政全体を萎縮させる。地方自治の時代に逆行する決定だ。
国立市のマンション訴訟> 1999年、並木道沿いに計画された高層マンション建設に市民らが反対。市は並木と同じ高さに制限する条例を定めたが、業者側は条例は無効だとして市と上原公子市長(当時)を訴え、条例を適法としつつ「中立性、公平性を逸脱して業者の営業を妨害した」と市に賠償を命じる判決が確定した。その後、市が業者に払った3000万円を上原さん個人に請求するよう、一部の住民が市を相手取り提訴。東京地裁判決は訴えを認め、市はいったん控訴したものの取り下げた。市は上原さんに支払いを求め、2011年から裁判で争っていた。賠償金を受け取った業者は「賠償が目的ではない」と同額を市に寄付している。