九条の会など市民への監視強化を危惧 「共謀罪」名称変え国会提出へ:千葉 - 東京新聞(2016年9月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201609/CK2016090202000191.html
http://megalodon.jp/2016-0902-0935-47/www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201609/CK2016090202000191.html

2003〜05年に政府が3回、国会に提出し、いずれも廃案となった「共謀罪」について、政府が「テロ等組織犯罪準備罪」と名を変え、共謀罪の趣旨を盛り込んだ新たな法改正案を、9月の臨時国会に提出する見通しとなった。世論の反発を抑えるためテロ対策を前面に打ち出した形だが、県内の九条の会や弁護士の間では「市民への監視強化につながりかねない」などと危ぶむ声が広がっている。 (中山岳、黒籔香織)
九条の会・ちばけん(千葉市中央区)事務局長の野口宏さん(77)は「テロが起きても良いと思う国民はいない。反論しにくい言葉で、罪名を付けたのでは」とみる。
政府が提出を検討する組織犯罪処罰法改正案は、罪の適用対象を「組織的犯罪集団」に限定し、罪となる要件に犯罪の計画を話し合うだけでなく、実行のための資金確保といった準備行為を必要とした。野口さんは「どんな団体を対象にするかは権力側が定義できるため、便利な言葉だ」と危ぶむ。
昨年、安全保障関連法が成立した際、国会周辺をはじめ、全国各地で抗議デモなどが行われた。野口さんは、与党の政治家が特定秘密保護法に反対する国会周辺のデモを「テロ行為」とブログに書いた点に触れ、「当時、反対の声を上げた人の中には、新たな法案で身の安全が脅かされると感じる人もいるだろう。法案は、こうした活動の萎縮につながりかねない」と心配する。
その上で「今後、改憲を進めるために野党共闘を分断させる意図があるのでは。テロ対策を口実に改憲を阻む勢力を分断し、弱体化させる目的ではないか」と推し量った。
弁護士会共謀罪対策本部委員の白井幸男弁護士は「法案が対象にする犯罪はテロ以外も多く含まれており、適用範囲が広すぎる」と指摘する。法案は、罪となる犯罪の範囲を「四年以上の懲役・禁錮の罪」とし、殺人や強盗のほか、道路交通法に触れた場合なども含め、六百超とされるためだ。
政府が法案成立を目指すのは、国連が〇〇年に採択した国際組織犯罪防止条約を締結するため、国内法の整備が必要という考えからだ。
だが白井弁護士は、条約が、国境を越えて二カ国以上で行われるマネーロンダリング資金洗浄)や経済犯罪を想定していると指摘。「条約はテロ集団に流れる資金を食い止める面があるが、法案はその範囲を超えている」と話す。
安倍政権が、三年前から特定秘密保護法や、電話などを傍受する対象の犯罪を拡大した改正法などを次々に成立させたことを挙げ、「治安強化や市民への監視を強める流れの中、法案の話が出てきたことに危険性を感じる」と語った。
共謀罪 複数の人が重大犯罪を行う前に相談し合意(共謀)しただけで罰する罪。小泉純一郎政権が2003年、04年、05年の計3回、関連法案を提出したが、当時、野党や日本弁護士連合会が「労働組合なども対象になりかねない」など反発。いずれも廃案になった。共謀罪を適用する犯罪については、自民党小委員会が07年に議論し150程度まで絞り込んだが、今回の法案には反映されていない。