<むのさん死去>最後まで平和訴え 後輩ら「思い継承」 - 毎日新聞(2016年8月21日)

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21日に101歳で死去したジャーナリスト、むのたけじさんは生涯を通じて戦争報道の責任と反戦平和を訴え続けた。親交があった作家やジャーナリストからは「平和への思いを引き継いでいかなければいけない」と反骨の精神を示した先輩をしのぶ声が上がった。
むのさんと共に特定秘密保護法の廃止を訴えた作家の澤地久枝さん(85)は「100歳を超えて体力的な心配もあるのに、反権力的な活動を続けたことが奇跡だ。『長い間、ありがとうございました』と伝えたい」と話した。
澤地さんは安倍政権が特定秘密保護法や安全保障関連法を成立させる状況に、「政治がどんどん悪くなり、戦争に近づいて行っている」と、むのさんと同じ憤りを抱いていた。集団的自衛権に反対する集会などで顔を合わせ、戦時下で新聞がいかに真実を報じなかったかを具体的に語るむのさんの講演に耳を傾けた。「新聞記者として大本営発表を報じた責任が、100歳を超えても活動する原点にあった」と振り返った。
ジャーナリストの大谷昭宏さん(71)は戦後70年の昨年8月、むのさんをインタビューする機会があり、「メディアが本当のことを伝えられなくなっている」としきりに心配する様子が印象に残っている。大谷さんは「二度と戦争を引き起こさないため、メディアは『真実を伝える』というむのさんの姿勢を引き継いでいかなければいけない」と話した。
むのさんは朝日新聞記者として終戦を迎えたその日、戦争報道の責任を感じて退社した。だが、後悔もあったようで、2008年の本紙のインタビューでは「退社を踏みとどまり、『本当の戦争はこうだった』と読者に伝え、おわびすべきだった」と話した。全国各地の講演では「本当に平和を願うなら、世界に向かって声を上げなさい。黙とうや祈りをささげても何の意味もない」と呼びかけた。
地元で反戦平和運動を共にした元秋田県横手市長の千田謙蔵さん(84)は「大変残念。世の中が戦争に向かおうとする中、生きて反戦平和を訴えてほしかった。古里の宝を失った」と肩を落とした。【島田信幸、池田一生】