http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016072402000128.html
http://megalodon.jp/2016-0725-0942-45/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016072402000128.html
その学者はこんなふうに書き出している。「信じられないような話だが」。続いて「ほとんどの人は信じないに決まっているが」としつこい。
そこまでためらい、やっとこう主張する。「長い歳月のあいだに人間の暴力は減少し、今日、私たちは人類が出現して以来、最も平和な時代に暮らしているかもしれないのだ」。スティーブン・ピンカー氏の『暴力の人類史』(青土社)。ハーバード大の心理学教授である。
教授がためらった理由は分かる。誰もそう感じていないからである。テロに紛争に殺人事件。世界は暴力に満ちている。「最も平和な時代」の実感がまるでない。
それでも、同書によると家庭内から国家間にいたるまであらゆる暴力は減少に向かっている。英国での殺人件数でいえば、十四世紀と二十世紀と比較した場合、95%減である。
安定した国家統治や知識、理性の向上によって人類は暴力を大幅に減らすことに成功したという。現代をより暴力的な時代と考えるのは血なまぐさい事件を記憶にとどめやすい一種の「錯覚」で教授は、「現在はそれほど邪悪ではない」という。
さて、また銃乱射事件が起きた。ドイツのミュンヘン。九人が死亡した。マクドナルドでハンバーガーを楽しんでいた子どもも撃たれた。ねえ教授。これでも、われわれは暴力が減った、「最も平和な時代に暮らしている」のでしょうか。
- 作者: スティーブン・ピンカー,幾島幸子,塩原通緒
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